児童虐待の専門職が 心理学や統計学を語るブログ

心理学や、心理学研究における統計解析の話など

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このブログでは、児童虐待関係の仕事をしているブログ主が、心理学とか心理学研究における統計解析の話などをします。

 

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彼氏彼女を作るためにロジスティック回帰モデルを活用する方法(恋愛心理学と統計)

「どうやったら彼女(彼氏)ができるんだろう」
きっと世の中の誰しもが、恋人ができないことについて悩んだことがあるはずです。
私も例に漏れず、特に中学時代は異性のことしか頭になく、そのせいでか成績は常に最底辺を這いつくばるカス生徒でした。

中学時代を思い起こしてみると、「どうやったら恋人ができるか」についてはクラスの恋愛未経験者の知恵(妄想のみ)を集めて何度も議論してみたものです。
そしてついに異性とのデートにこぎつけた時、意味も分からずメンズノンノ(名前聞いたことあったから)やKERA(女の子が可愛かったから)を読んで、それっぽい知識や異性の生態なんかをリサーチし、その結果失敗を繰り返していたにも関わらず、周囲には「結構いい感じだったw」とうわべを取り繕う悲し過ぎる嘘を繰り返していました。
しかし周囲には嘘だと気付かれなかったため(恋愛事前分布がない連中だったから)、様々な質問をされては想像でちぐはぐな回答を繰り返し、質問した側もよく分かっていないので「スゲー」となるという、マヌケがマヌケの言うことを真に受ける地獄のような状況が展開されていました。

今回の話は、そんな悲劇が日本で繰り返されないために、私なりに考えた恋愛心理学です。

恋人ができない(0)という状況から、いかにして恋人ができた(1)という状況に変化させるかを考えます。つまり、どんな変数が得られれば、恋人ができない(0)⇒恋人ができた(1)となるか、と言い換えられます。
目的変数はすなわち、恋人の有無です。有無だけなので、0or1の2変数データです。
説明変数は以下の表の通りです。
f:id:romancingsame:20200802162009g:plain

この説明変数がどれだけ恋人の有無という目的変数に影響するか、を分析する方法として、ロジスティックモデルを用いた回帰分析があります。
ロジスティック回帰分析とは、重回帰分析と近い分析方法で、複数の説明変数を用いて1つの目的変数を説明・表現するという意味では雰囲気が似ています。
重回帰分析では、説明変数が目的変数の値を変化させます。そのため、説明変数から目的変数の「値」を予測可能です。
一方、ロジスティック回帰分析で考えるのは「特定の現象の有無」です。係数の得られた各変数に実際の数値を入力していき、目的変数である「特定の現象」が発生する確率を導く、という使い方ができます。また後半に説明しますが、オッズ比というのを利用し、○○は××に比べて~倍「特定の現象」が生起する確率が高い、という表現が可能になります。

では、実際に分析してみます。
以下のStanコードを使用して実際に分析しました。無駄に身長と収入を階層モデルにしていますが、そこら辺は特に自由にやって大丈夫です。
data {
int I;//被験者数
int y[I];//目的変数
int s[I];//性別
real high[I];
real money[I];
int b1[I];
int b2[I];
int b3[I];
int b5[I];
int b7[I];
int b8[I];
}

parameters {
real intercept;
real bhigh;
real bmoney;
real bs;//0:女、1:男
real bexfrend;//元恋人数
real balc;//週の飲酒数
real bfas;//おしゃれ:1
real bmarry;//既婚者:1
real bface;
real balone;//一人暮らし:1
real mu_hi;
real s_hi;
real mu_mo;
real s_mo;
}

transformed parameters {
real q[I];
for (i in 1:I)
q[i] = inv_logit(intercept + bhigh*high[i] +bmoney*money[i] + bs*s[i] +
bexfrend*b1[i] + balc*b2[i] + bfas*b3[i] +
bmarry*b5[i] + bface*b7[i] + balone*b8[i]);
}

model {
for (i in 1:I)
high[i] ~ normal(mu_hi,s_hi);
for (i in 1:I)
money[i] ~ normal(mu_mo,s_mo);
for (i in 1:I)
y[i] ~ bernoulli(q[i]);
}

得られた結果は下の通りになります。
f:id:romancingsame:20200802162115g:plain

これらの係数のmean値(平均値)より恋人の有無は

  • 13.63(exp) + 15.74*身長(exp) +1.75*収入(exp) - 0.43*性別(exp) + 0.21*元恋人数(exp) - 0.62*週の飲酒量(exp) + 1.64*おしゃれかどうか(exp) - 0.08*既婚かどうか(exp) + 0.83*顔魅力(exp) + 0.32*一人暮らしかどうか(exp)

によって決まることがデータから分かりました。
しかしこの式の(exp)って何なんでしょうか。この式の(exp)という部分、ここが重回帰分析と異なる大きなポイントになります。

ロジスティック回帰は、リンク関数としてロジット関数を用いているので、係数の解釈がやや複雑になります。
オッズという概念があります。オッズとは、「失敗するよりも何倍成功しやすいか」を表した指標で、オッズ=p/(1-p)で表現されます。pは確率値です。このオッズの変数日はオッズ比と呼ばれます。
ロジスティック回帰モデルの回帰係数に指数関数expを適用するとオッズ比になります。そのため、回帰係数は対数オッズ比であると解釈されます。
上の結果だと、正の値になっているものは、その変数が増えるほど(1であるほど)恋人の獲得率が上がります。
そこからオッズ比を算出して、具体的な比率を出していくという流れです。

以上により、解釈は色付けしたオッズ比の部分を参照して行います。
解釈例1:身長が180㎝の男女は、160㎝の男女に比べ、2.52倍の確率で恋人を獲得しやすい
解釈例2:男性は、女性と比較して、0.65倍の確率で恋人を獲得しやすい(男性の方が恋人ができにくい)
という感じになります。
結論として、オシャレな長身で美男美女で金を稼いで、飲酒を少なくして1人暮らしをしたら恋人ができます。また、男性よりも女性の方が倍くらいの確率で恋人ができますので、男は一層頑張って欲しいところです。
ついでに、このデータは仮想データなので、結果も妄想のようなものなのですので注意してください(分析は真面目にやりました)。

描画テスト(HTP)って正しい根拠あるの? ⇒検証してみた

描画テストって、なぜか日本では(●●県の児童相談所だけ?)よく使用されていますが、そもそもこれってちゃんとした検査なんでしょうか。

個人的に描画や「私の経験」でアセスメントする(ピーーー)県の児童相談所の先輩心理司の指導に吐くほど馴染めなかったため、自分でアセスメントスタイルetcを作り上げていった悲しい過去があったりします。

とまあ、私個人のくだらない黒歴史は横にして、今回はその描画テストの正しさとか、説明責任に耐えうるものなのかとか、そういったことを検討していきたいと思います。

 

日本における文献レビューでは、佐渡忠洋・坂本佳織・伊藤宗親(2010),日本におけるバウムテスト研究の変遷 において、描画テストの数量的エビデンスの乏しさについて以下のように言及しています。

バウムテストにおける数量的な研究は,バウムを形態基準,即ち,「一線枝」や「一線幹」などの指標を用いて数量化して検討する方法が主流であると考えられた.しかしながら,論文を吟味すると,指標の基準や数が不明瞭な論文が多かった…その有用性は十分検証されてはおらず,それらの指標が選抜された理論的根拠が不明瞭である.…<印象評定>も SD 用形容詞対がいくつも報告されており,<空間配置>も空間の分割方法が研究で異なるなど,統一の基準の作成には至っていない.

10年前のレビューの時点の話ではありますが、なんだか泣けてくる記述です。

 

G Groth-Marnat, L Roberts(1998),Human Figure Drawings and House Tree Person Drawings as Indicators of Self-Esteem: A Quantitative Approachからは、自尊心についての評価がHTPの評価と関連していないことが示されています。

 

また、最近の研究で、描画テストの有効性について検討された研究があります。Guifang Yang, Liping Zhao, and Lijuan Sheng(2019),Association of Synthetic House-Tree-Person Drawing Test and Depression in Cancer Patientsでは、がん患者のうつ病に対するS-HTP描画テストの結果(一部のサイン)とSDSスケール(自己評価うつ病スケール:自己表記)の結果と正の相関が示されています。具体的には、装飾のない家、シンプルな人物画、無表情、などです。

例えば、装飾のない家の記述統計では

    計       うつ      非うつ     χ二乗 p

あり       136(81.4)        51(81.0)          85(81.7)          0.016     0.900

なし       31(18.6)          12(19.0)          19(18.3)

となっています。

装飾のない家を描いた人は全体の8割強。これはうつのあるなしは関係がありませんでした。

小さいサイズだと

    計       うつ      非うつ     χ二乗 p 

あり       46(27.5)          27(47.4)          19(17.3)          17.039   <0.001

なし       121(72.5)        30(52.6)          91(82.7)

となっています。

小さいサイズを描く人は全体の3割以下で、うつの人の方が有意に小さいサイズを描きやすい、というもの。

 

うつ病の予測におけるS-HTP描画特性の役割を調べるロジスティック回帰分析(部分抜粋+和訳)。

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上の結果より、SDS(うつ病グループを1に設定し、うつ病のないグループを0に設定)の結果を従属変数としたロジスティック回帰モデルは以下のように示されています。

ロジット(P)= -2.997 + 1.345 * (サイズ小) + 0.919 * (弱い線) + 2.044 * (簡略図)-0.888 * (装飾図)-0.944 * (歪線・非結合) + 1.439 * (装飾家) + 2.106 * (小さいドア) + 0.679 * (枯れ木) + 1.148 * (丁寧な顔)

この回帰式をがん患者に適用した結果、がん患者32人にうつ病があり、正解率は56.1%(32/57)でした。同時に、うつ病のないがん患者110人を対象にロジスティック回帰方程式を実行したところ、98人のがん患者にうつ病がなく、正しい率は89.1%(98/110)でした。つまり、うつ病的中率は半分…要はコイントスとそう変わらないということです。でも、うつ病が無い人への的中率は高いですね。

 

さて、この指標を高橋依子著「描画テスト」と照らし合わせてみましょう。

サイズ小、弱い線、簡略図、枯れ木については抑うつ系のサインである旨の記載がありますが、他のサインではそれはありません。

歪線、非結合(-)は外側からの影響を受けやすく、無力感、自己不確実感、不安、小心などを表す。小さいドア(+)は積極的な人間関係を好まず、他者の接近を避けようとしたり、無力感を表すとあります。丁寧な顔(+)は外見や人間関係への関心が強かったり、不適切な感情を抑圧していることが考えられるとあります。

うつ病得点に-に働く歪線・非結合は抑うつサインはないもののそれに近い状態のサインであり、+に働くはずの他のサインは抑圧傾向に関わるサインではありません。HTPとS-HTPの差異のためかもしれんので断定的なことは言えませんが、この本と先述の研究結果の間には解離がありそうです。

そもそもこのサインの記述、バーナム効果の起こりやすい、捜査一課の田宮さん画像の状況になりかねないやつで、アセスメント道具としてどうなんだろうという思いが強いです。

 

児童相談所の現場で右向け右的に使用され、某児童相談所所長(心理出身)なんて描画やってないと定例会議でなんか言ってくるくらいに高い地位を獲得している描画テストで、現場の心理司さんは、この高橋依子著「描画テスト」と参考に解釈をしたり、所見の根拠に用いたりしています。

先述の少ない先行研究だけで言ってはいけないかもしれませんが、いずれにせよこの高橋依子著「描画テスト」、もしくは描画テスト自体がエビデンスに乏しいものである可能性は否定できません。もっと複数の論文からメタってみたら、より深いところまで検討できるんじゃないかなと思います。

 

 

追記(2020/7/12)

6年前と古いデータですが、バウムテストと自尊感情尺度、外向性尺度(big-five)の調査結果を用いて分析してみました。

分析方法はIRT(項目反応理論)。これをMCMCにより事後分布を出しました。

尺度得点は、便宜的に1,2を0、他を1などとして、自尊感情高得点群・低得点群、外向群、内向群、みたいに分けてデータをセットしなおしました。尺度得点の平均値を用いると、項目が「サイン+得点」の2つとなって結果がうまく出ないので、項目ごとの得点1つずつをデータにセットしました。

IRTは1次元尺度でないと使用不可なので、「自尊高+描画大」のように、セットになる概念+描写と1つずつ、計4つの分析を行いました。

バウムの統計が載っている本に、本研究で用いたサインのデータがなかったため、事前分布は適当に設定しています。

 

コードは↓

data {

  int<lower=1> J; // 被験者

  int<lower=1> K; // 項目(項目数の異なるデータセットがあるので複数コードを作成)

  int y[J,K]; // 観測数

}

parameters {

  real theta[J];//被験者パラメータ

  vector<lower=0>[K] a;//識別度

  vector[K] b;//困難度

}

model {

  theta ~ normal(0,1);//被験者パラメータは平均0、SD1と仮設定

  a ~ cauchy(0,1);

  b ~ normal(0,1);

    for (j in 1:J){

    for(k in 1:K){

      y[j,k] ~ bernoulli_logit(a[k]*(theta[j]-b[k]));

    }

  }

}

以下結果(表)

f:id:romancingsame:20200712114859g:plain

識別度については>0の値で設定してあります。結論から言うと、いずれも識別度は高いとは言えず、各心的概念をよく識別するサインであるとは言い難い結果になりました。

困難度についてはいずれも平均値が正の値を示しました。いわゆる、平均以下の特性(自尊心とか)でもヒットする率が高いサイン、みたいな結果にはなりませんでした。

まとめると、自尊心ボロボロの人が大きい樹木を描くみたいなエラーは出づらいが、そもそもこのサイン(大きさ、位置)で自尊心のような心的概念を識別できているとは言い難い、という感じでしょうか。

先行研究だけで描画をディスるのもアンフェアかな、と思って自ら分析してみましたが、それでも描画を支持する結果は得られなかったなというのが正直なところです。

 

ただ、IRTにハマる形で、かつ事前分布の利用も視野に入れたデータ収集を試みたら、また違う結果になる可能性はあります。なので今後はそういった研究もやってみたいなと思うところです。

同時確率やら周辺分布やら

ゴリゴリ文系の自分が統計の勉強をしていて(^q^)となった概念シリーズ。

勉強のためにまとめたもの。

 

・同時確率

例えば、2つの変数XとYがあるとします。X=0,Y=1である確率をP(X=0,Y=1)で表し、これを同時確率と呼びます。いちばん基本的な同時確率の考え方です。

 

では次に、これを連続確率変数に変えて考えてみます。

a<X<bかつc<Y<dとなる確率は、P(a<X<bかつc<Y<d)と表現できます。

P(a<X<bかつc<Y<d)同時確率と呼びます。

 

・同時確率密度関数

p(x,y)≧0

かつ

∬p(x,y)dxdy=1

を満たす関数によって、同時確率

P(a<X<b,c<Y<d)=∫(∫p(x,y)dx)dy を定義し、

p(x,y) を、X,Yの同時確率密度関数と呼びます。同時確率密度関数を図にすると、よく見る山みたいになっている三次元のあれです。つまり、f(x,y)のグラフは局面になります。1次元の確率密度関数f(x)をxの全区間積分すると1になるのと同じで、f(x,y)はx,yの全区間で重積分すると1になります。

R2f(x,y)dxdy=1

これは、先述のよく見る山みたいになってる3次元のあれの体積が1であることに対応します。

複数の確率密度関数f(x1,x2,x3…xn)があって、x(1~n)の全区間で重積分をしたら1になる場合、f(x1,x2,x3…xn)同時確率密度関数という、と言い換えられます。

 

・周辺確率

ただ一つだけの事象が起きる確率。例えば、Xの周辺確率とは、他の事象に関係なく、事象Xが発生する確率を指します。周辺確率は、周辺確率を求めたい事象とその他の事象の同時確率の総和で求められます。Xの周辺確率はP(X)、周辺確率密度関数は、f(X)と表記します。

 

・周辺分布(周辺確率分布)

同時分布から片方の変数を積分によって消去することで得る確率分布のことを周辺分布といいます。例えば2変量正規分布では、x(またはy)単独の事象に関する確率の分布のことです。確率変数(X,Y)の確率密度関数がp(x,y)である時にはこれを同時確率分布といいますが、これの周辺分布はそれぞれ

p(x)=∫p(x,y)dy

p(y)=∫p(x,y)dx

と、それぞれの確率分布によって定義されます。

行列のランク

ゴリゴリ文系の自分が統計の勉強をしていて(^q^)となった概念シリーズ。

勉強のためにまとめたもの。

 

・行列のランク

行列において、少なくとも1つは0でない要素がある行の個数、ないし行ベクトルのうち零ベクトルにならないものの個数を、その行列のランク(階数)といいます。

 

ランクはベクトルの線形独立性との関りがあり、その線形独立(一次独立)である列ベクトルの最大個数とイコールになります。

ある行列が与えられたとき、それを複数の方程式とみなして式を消去していく要領で、最終的にいくつかの式が残った時、その式の個数?がランクというイメージです。

 

一般に、m×n行列Aに対し、一次変換の像{Ax; x∈Rn}の次元をAのランクといい、rank(A)で表します。

一般に、m×n(ただし、m≧n)行列Aにおいて、

rank(A)=nのときフルランクといい、

rank(A)<nのときランク落ちしているといいます。

とくに、正方行列がランク落ちしている場合は、連立方程式の解が存在しても一意でなく不定となります。標本の大きさ<母数の個数、となる場合なんかが該当します。

 

Rのエラーでランクがどうのこうの言われることがあって('A`)でしたので、せめて直感的に理解できるようになれたらいいなと思う。

対数変換や正則化などについて

ゴリゴリ文系の自分が統計の勉強をしていて(^q^)となった概念シリーズ。

勉強のためにまとめたもの。

 

・対数変換

連続値を対象にしたモデルの多くは正規分布を仮定しています。ですが、現実のデータが正確に正規分布している場合はほとんどありません。

だけど、データを一般化するためには無理やりにでも正規分布に近似させたい。そんなときに用いるのが「対数変換」です。

もし、元のデータが対数正規分布に従っているならば、対数変換後のデータは正規分布に従います。

引用:対数変換ではデータの分布が変化します。対数変換の効果が大きいのは偏りがある数値データです。対数変換には次の特徴があります。特徴量のスケールが大きい時はその範囲を縮小し、小さい時は拡大します。これにより、裾の長い分布を押しつぶしたように山のある分布に近づけることができます。また分散が大きなデータでは平均値が大きいほど等分散となりやすい傾向にあります(https://uribo.github.io/practical-ds/02/numeric.html)

 

・目的関数の最小化

目的関数がパラメータについて簡単な式で書ける場合

モデルに含まれるパラメータをまとえてθとすると、データとモデルが与えられた時の目的関数は、θだけの関数としてL(θ)と書かれます。これが最小になるための必要条件は、数学的に

∂L/∂θ=0

とパラメータによる微分が0になることです。こうして出てきたパラメータの値の組が1つであればそれを採用し、複数出た場合は最終的な目的関数の値が最小のものを選択します(選ばれなかったものは局所最適解となります)。

 

正則化

過学習という概念があります。モデルとデータを合わせすぎてしまい、本質的なデータ生成規則とかけ離れたモデルを推定してしまうことです。データを信用しつつもそこに合わせすぎないことが大切となります。

ウチの清水和秋教授も言ってましたが(確か因子分析の回転の話の時)、データについての理論に沿った回転を行うべきであって、結論に合わせるための回転はいけない、と。それと同じベクトルの話ですね。

そこで過学習を防ぐ方法の1つに「正則化」があります。正則化の考え方としては、パラメータの値や数を減らして複雑でないモデルを選択しやすくするというものです。これは目的関数にパラメータの「値の大きさ」である||θ||を足して

L(θ)+λ||θ|| 

を最小化するというものです(λは適当な定数)。これにより、パラメータ値が小さいものが選ばれやすくなります

また、||θ||の値の大きさの定義は、例えばL2ノルム正則化という方法があります。モデルに含まれるすべてのパラメータを二乗して足して計算するそうです。

||θ||=Σiθ2i

 

本エントリの目的関数の最小化と正則化の内容の大部分は「データ分析のための数理モデル入門(江崎貴裕)」を参考にしました。江崎先生は自分よりも年下なのにすごい。

人はなぜ人を攻撃するのか―被虐待児の攻撃性について心理学的に分かっていること+α

人はどうして人を攻撃するんでしょうか。

~~少年S君(4歳)は、父からの身体的虐待で一時保護されています。父母の口論を毎晩見続け、父から母への暴力が毎週のように発生していたのも見ていました。耐えかねた母が浮気相手の男を連れて失踪。父子生活となったのがS君が3歳になったばかりの時。でも父は、言うことを聞かないS君を度々暴力によってしつけるようになります。暴言を吐き、S君が言うとりに行動しないとお腹や頭を強く殴ります。保育園の先生が、わき腹に数センチの青あざを発見し、一時保護に至りました。保育園での様子も保護所での様子も同様に、玩具の取り合いで相手を殴る・やりたくないことがあると叫んだり相手をたたいたりして、自己の欲求を押し通そうとする傾向が強いというものです。父は「ウチの子は発達障害だから」と言うが、ADHDやASDの診断基準には当てはまらず、単に“手がかかり、言うことをすぐきかず、言葉じゃなくて衝動的に手が出る”というものでした。~~

児童相談所で勤務していると、虐待を受けた子どもは他と比較すると明らかに攻撃行動が顕著です。
しかしそれは当然、その子どもの性格的な問題ではありません。虐待の影響により、他者を攻撃せざるを得ない状態になってしまっているのです。
しかし、それはいったいどういう理屈からなのでしょう。

自分が一応想定していたメカニズムとして、①虐待による歪んだ対人認知・内的作業モデル、②扁桃体の不安恐怖に対する反応としての攻撃行動の2点を主に用いた説明を行っていました。簡単に言うと、虐待によって些細な言動を否定的(自己への攻撃・非難など)にとらえ、その否定的な言動から自分を守る反応として扁桃体機能として攻撃行動を生起させた、というものです。その中で、言語化による意思疎通不足から情緒的交流欠如があり、③言語化による欲求不満解消が困難、と繋がっていったという見立てを立てることも度々ありますが、あくまで子どもの能力的側面でなく大人の情緒的交流欠如という環境的側面によるもの、という考えからです。
ただ、ちょっとシンプルすぎる説明ですし、本当にこれだけで正確に説明できているのか不安はあります。もっと言うと、攻撃行動の基盤は扁桃体だけでなく視床下部にもあるため、上記のメカニズムは十分ではないんだろうなと感じています。
なので、今回は心理学的な理論などもさらっと概説しながら、もうちょっと攻撃性・攻撃行動について深堀りしていければいいなと思います。
でも勉強していると、攻撃性・攻撃行動についての論文ってめっちゃ少ない…。実験デザインの難しさからなんでしょうかね。

まず、怒りの定義を整理します。
怒りとは、外的な脅威に対する防衛反応といえる情動であり、典型的には、他者から与えらえた痛みや苦痛が、敵意的な意図に基づくものだと認識した際に生じる(Shiota & Karat,2012)、とされています。不安や恐怖と同様に、怒り情動には闘争―逃走反応と呼ばれる、一連の生理的覚醒状態が伴います。

攻撃行動の定型
まず攻撃行動は「反応的攻撃」と「道具的攻撃」に区別できるとされています。
反応的攻撃:敵意的攻撃と呼ばれ、外的な刺激に対する怒りによって誘発される攻撃行動。交感神経系が興奮し、心拍数上昇、立毛や発汗、発声などがみられる。
道具的攻撃:能動的攻撃と呼ばれ、何らかの目標を達成するための手段として用いられる攻撃行動で、必ずしも怒りや交感神経系の興奮の特徴を伴わないとされる。

攻撃行動の原因について、いくつか心理学的な理論が提唱されています。
攻撃行動の原因としては内的衝動説、情動発散説、社会的機能説の三つの系統が考えられています。
内的衝動説:人間には内的な攻撃の本能(衝動)が備わっており、それが表面化したのが攻撃行動であるとする考え方です。精神分析学者のフロイトや動物行動学者のローレンツがこの立場を採っています。
情動発散説:不快な感情を解消するために攻撃行動を起こすという考え方です。ダラードは欲求不満が常に何らかの攻撃行動をもたらすと論じており、またバーコヴィッツは欲求不満に加えて攻撃行動のきっかけによって初めて起こると論じています。
社会的機能説:さまざまな対立や利害衝突などの社会的葛藤を解決するために攻撃行動が機能しているという考え方です。攻撃の社会的機能としては強制・制裁、防衛、威嚇などの機能が挙げられます。
自分が仕事をするうえでは、元々情動発散説をベースに持っており、社会的機能を誤学習して攻撃行動に至った、という考え方を用いています。

以下、いくつかの基本的知見についてまとめます。
・怒りの抑制
認知的再評価群/抑制群/アクセプタンス群 の3群の比較では、怒りのきっかけとなった出来事や他者について様々な観点から認知的に再評価することが、怒りを低減するために役立つことが示されています。また、感情が過小ないし過大に制御されると、攻撃性の可能性が高くなることが示されています。

・攻撃行動と脳etc
視床下部:系統発生的には古い脳領域であり、摂食行動、性行動、攻撃行動、睡眠といった本能行動の中枢です。視床下部への電気刺激は攻撃行動を引き起こします。
扁桃体:攻撃性に深く関与しており、例えばハムスターの扁桃体への刺激は強い攻撃行動を引き起こしますし、扁桃体の容積と攻撃性に負の相関が示された知見もあります。また、IED(間欠性爆発性障害)患者では怒りを表す顔に対して扁桃体の反応性が亢進し、OFC(眼窩前頭皮質)の活性化が低下し、攻撃的な被験者は怒った顔に対する反応において扁桃体とOFCの結合を示すことができない等、衝動的な攻撃的行動の既往歴を持つ個人において、怒った顔の処理に対する扁桃体-OFC機能不全が示されています。
視床下部腹内側核 (ventromedial hypothalamic nucleus; VMH)については、視床下部腹内側の刺激で防御的威嚇行動が、その背外側で逃走行動が生じることが示されています。
テストステロン:分泌が増加する思春期から攻撃行動が増加するとされています。また、成体雄の精巣を除去すると攻撃行動が低下し、そこにテストステロンを投与することで攻撃行動が回復することから、テストステロンが攻撃行動の出現に必須であることが示されています。
セロトニン(5-HTT):衝動攻撃性人格障害患者の左ACC(前帯状回)における5-HTT結合の低下が示されています。他にも、コルチゾールも攻撃性に関与しているという知見が得られていますが詳細については不明な点が多いです。

日本の論文で、いくつかのユニークな知見もあります。
かつおだしが攻撃行動を低下させる仕組み」では、マウスを用いた実験において, 1) かつおだしを長期摂取させると攻撃行動が低下すること,2)かつおだしの作用に脳内のパルプアルプミン陽性神経密度の増加が関与すること, 3) これらの作用に迷走神経を介する情報は関与しないこと,が示唆されました。「Behavioral and functional connectivity basis for peer-influenced bystander participation in bullying (Takami・haruno, 2018)」では、攻撃に加担する要因として、他者への同調だけが有意な効果を持ちました。また攻撃への同調の程度は、その人の社会的不安傾向に相関し、他者の感情を感じる度合いである共感性とは相関しないことを見いだしました。人が攻撃に加担する程度と、その人の社会的不安、および扁桃体と側頭・頭頂接合部の結合強度と相関することを示しました。今回の結果から、不安を減らすことで攻撃行動を減らせる可能性が示唆されると結論付けられています。また「大学生の対人恐怖心性と攻撃性の関連について(太宰・佐野,2012)」では、「対人恐怖心性尺度」における、他者の目が気になる悩み因子,社会的場面で当惑する悩み因子,集団に溶け込めない悩み因子の 3因子は攻撃性の全ての側面と関連していました。この3つの恐怖は最終的に攻撃性へとつながっているようです。
まとめると、不安や恐怖が攻撃性に加担している様子でした。攻撃行動の低下には、かつおのおだしを摂取するのが良いですが、日本人が穏やかなのと(主観)関係があるんでしょうかね。


上述から検討すると、
さすがに伝達物質を考慮することは困難ですが、
・虐待により傷つけられた対人表象・内的作業モデルがベースにあり、扁桃体-OFC機能不全による他者の怒り表情処理の失敗(内的作業モデルの傷付きでも表情認知の歪みが指摘されています)と、他者の言動を被害的に歪んで捉えることが重なることで、不安や恐怖が一層喚起され、不安や恐怖から自己を守る機能として又はフラストレーションの解消として、恐らく親から誤学習した暴力等の攻撃行動を発現させる
…そんな流れがあるのではないでしょうか。
この範囲なら攻撃行動についてのモデルとしてオーバーフィッティングはしていないんじゃないかなぁ、とか思ったり。なので今後はこれをベースに改良を加えつつ、攻撃行動を表している子どもを個別化してアセスメントしたいなと思います。

モーメント母関数と分布の再生性

ゴリゴリ文系の自分が統計の勉強をしていて(^q^)となった概念シリーズ。

勉強のためにまとめたもの。

 

・モーメント母関数について

 

その分布の特徴を数値化する工夫として、モーメントというものがあります。

モーメントは積率ともいわれ、分布の平均値やSD、歪度や尖度を数値化するものです。

その概念を使用したモーメント母関数(積率母関数)というものがあります。母関数とは、何かを生み出す関数というニュアンスで、モーメント母関数=モーメントを生み出す関数=モーメント母関数に一定の操作を施すとモーメントが算出される、というものです。

統計学を学んでいると出てくる用語で、確率分布の性質を導くうえで便利なものです。

 

モーメント母関数を用いる際には、確率変数 X に対して,

f:id:romancingsame:20200506140807g:plain

が存在するとき、これをtの関数とみてモーメント母関数(積率母関数)と定義します。

例えば、

幾何分布

f:id:romancingsame:20200506140917g:plain

に従う確率変数Xの期待値を求めるとします。計算の便宜上、(1-p)→qとします。

幾何分布のモーメント母関数は

f:id:romancingsame:20200506140842g:plain

となります。

このモーメント母関数を利用しやすい形にするために、f:id:romancingsame:20200506140807g:plainについてM(t)をtで微分します。↓

M(r) (t)=E(Xretx)  となります。ここでt=0とおけば

M(r)(0)=E(Xr)   となります。

よってこの期待値はM(1) =1/pとなりました(途中計算省)。

 

 

・分布の再生性について

例えば、「互いに独立に正規分布に従う確率変数の和」が従う分布は常に正規分布になります。なので、正規分布は再生性をもつということになります。

確率変数X,Yが互いに独立にそれぞれ正規分布N(μ1,σ1),N(μ2,σ2)に従う場合、X+Yが従う分布のモーメント母関数は(途中計算省略)、正規分布N(μ1+μ2,σ1+σ2)のモーメント母関数になる。したがってX+Yが正規分布に従うこと、すなわち正規分布は再生性を持つということになります。