児童虐待の専門職が 心理学や統計学を語るブログ

心理学や、心理学研究における統計解析の話など

ADHDと虐待・脳・攻撃性

0.ADHDの概要
1.多動性と衝動性
2.ADHDと関連が示されている概念
 2-1.虐待
 2-2.虐待以外
 2-3.環境的影響
 2-4.遺伝的影響
 2-5.神経伝達物質的影響
3.脳の構造的影響
3-1.大脳基底核と小脳
3-2.前頭前野
3-3.扁桃体
4.攻撃性の鑑別(ADHDかそうじゃないか)
 4-1.ADHD
 4-2.反応的攻撃性

0.ADHDの概要
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、不注意、衝動性、多動性の症状を特徴とする神経発達障害です。
ADHDには、以下の3つのタイプがあります(診断基準とは別)。
(1)主に不注意なタイプ
(2)主に過活動・衝動性のタイプ
(3)主に多動なタイプ
ADHDの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、研究により、遺伝、脳の構造、環境要因など、いくつかの要因がその発症に寄与している可能性が示唆されています。

1.多動性と衝動性(ここは診断基準に準拠)
衝動性と多動性はADHDの2つの異なる症状であり、両者には異なる神経学的な基礎メカニズムが関与していると考えられています。
ADHDの多動性は、そわそわする、落ち着きがない、じっとしていられないなど、過剰で不適切な運動活動を特徴とします。多動性は、運動制御に関わる脳領域である大脳基底核や小脳の機能障害と関係があると考えられています。研究により、ADHDの子どもたちは、これらの脳領域の大きさや機能に違いがあり、それが多動性の一因になっている可能性があることが分かっています。
ADHDの衝動性は、行動を抑制すること、満足を遅らせること、自分の行動の結果を考慮することの難しさを特徴とします。衝動的な行動は、意思決定、衝動制御、計画などの実行機能に関わる前頭前野の機能障害と関連しています。研究によると、ADHDの子どもは前頭前野の活動が低下しており、これが衝動性の一因になっている可能性があります。
まとめると、多動性は小脳や大脳基底核、衝動性は前頭前野が大きく関与していると考えられています。

2.ADHDと関連が示されている概念
2-1.虐待
児童虐待歴のあるADHD 症例では、児童虐待歴がない症例よりも 自殺念慮・企図スコアが有意に高かった。さらに、自殺念慮および精神的虐待のスコアが、ADHDの成人における自殺企図スコアの有意な予測因子であった(Yildirim & Dalkıran, 2022)。
ADHD のある成人は、健康な対照者よりも幼少期のトラウマを経験する割合が高い。ネグレクト歴のあるADHD者だけが、そうでない人よりも処理速度が遅かった。ADHDグループでは、ネグレクト・心理的虐待と処理速度との間に有意な関連性が見出された(Baran et al., 2018)。
母親のADHDと子供の性別(男児)が精神的虐待を増加させます。一方、母親の精神的虐待や身体的無視の履歴、父親の注意欠陥は性的虐待を増加させ、母親の多動性/衝動性の高さはADHDの子供の感情的ネグレクトを増加させる。ADHDの子供に対する虐待は、子供のADHDの症状よりも親の要因とより関連している(Gul & Gurkan, 2018)。
IPV(=DV)の危険因子としてADHD症状が示唆された。ADHDは、素行障害(CD)と反社会性パーソナリティ障害(ASPD)を媒介変数としてIPVへ影響を与える可能性(Buitelaar et al., 2022)。

2-2.虐待以外
併存疾患: ADHDはしばしば、反抗性障害(ODD)、行為障害(CD)、不安障害、気分障害などの他の精神疾患と併発する。
ワーキングメモリー: ワーキングメモリーの障害は、一貫してADHDと関連している。ADHDの子どもはワーキングメモリーに障害を示すことが多く、認知課題中に情報を保持し、操作する能力に影響を及ぼす可能性がある。
抑制性コントロール: 不適切な反応や行動を抑制する能力である抑制性コントロールの障害は、ADHDの中核的な特徴であり、Go/No-GoやStop-Signalパラダイムのような課題を通して評価されることが多い。
認知的柔軟性: 認知的柔軟性の欠如、つまり注意を転換したり、変化する要求に適応したりすることの難しさは、ADHDの症状と関連している。ADHDの子どもは、課題の切り替えや新しい状況への適応に苦労することがあります。
時間の認識: いくつかの研究によると、ADHDの子どもは時間認知が変化している可能性があり、時間間隔を正確に見積もり、時間を効果的に管理することが困難になる。
運動技能: ADHDの子どもでは、微細運動技能および粗大運動技能の障害が報告されており、協調性や正確さを必要とする活動に影響を及ぼしている。
社会経済的地位: 社会経済的地位が低いほどADHDのリスクが高まることが研究で示唆されている。社会経済的要因は、ADHD症状の発現や管理に影響を及ぼす可能性がある。
子育てのスタイル: 批判が多かったり、しつけに一貫性がなかったりするような子育ての仕方は、ADHDの症状と関連している。支持的で肯定的な子育ては、ADHDの子どもによい影響を与える可能性がある。
他に、ADHDの子供は反応制御(進行中の行動を中断)の障害を示したが、積極制御(停止が必要であることが事前にわかっている場合に応答を制御する)は維持されることや(Pani et al., 2013)、感情調節不全が成人ADHDの中核症状という報告もある(Hirsch et al., 2018)。さらに、育児ストレス (r= .25)、否定的な育児慣行 (r= .19)、親のパートナーシップの崩壊 (r= .19)、親の精神病 (r=.14–.16) 、社会経済的地位 (r= −.10)、およびひとり親家庭 (r= .10) は、ADHD 症状の重症度と有意に関連(Jendreizik, 2023)。
ADHDの恐怖機能について、ADHD者では、早期消去時の島皮質の活性化が有意に大きく、後期消去時の背側前帯状皮質の活性化が小さく、後期消去学習時および消去想起時の内側前頭前皮質の活性化が小さく、消去想起時の海馬の活性化が大きかった。トラウマを負わず、薬物治療を受けていない成人のADHDでは、消去学習と消去想起の際にPTSDのある被験者と同様の恐怖回路の異常がみられた。これらの所見は、ADHDPTSDの有意な関連、およびADHDにおける情動調節障害を説明できる可能性がある(Spencer et al., 2017)。
ADHDや行動障害(DBD)の特徴として、衝動的攻撃性(IA)と反応抑制機能障害(RI)がある。
前頭-線条体-小脳の広範な機能障害がADHDとDBDに関与し、ADHDとDBDには衝動的攻撃性と機能不全反応抑制が認められる。ADHDの衝動的攻撃性(IA)は前頭前野帯状皮質の障害と関連が、DBDの衝動的攻撃性(IA)は重度の皮質-皮質下皮質の機能不全と関連している。反応抑制機能障害(RI)の障害は、外側前頭前野、島皮質、扁桃体の活動低下に起因している(Puiu, 2018)。

2-3.環境的影響
母親の抑うつ、ゆるいしつけスタイル、育児ストレスなどの早期家庭環境の特徴が、ADHD症状の(悪い意味での)安定性、実行機能障害、QOLの低さの長期予測因子であった。理解しやすく、管理しやすく、意味のあるADHD児の育児に対処するための資源は、ADHDの症状の進展に好ましい影響を与えた。対照的に、子どもの幼少期の両親のストレスと、健康、気分、仕事、余暇活動、社会的関係などの日常生活のさまざまな領域における子どものその後の生活の質との間に負の関係が検出された(Miranda, 2021)。
妊娠・出産前後の影響も報告されている。妊娠中の因子:妊娠前体重、子癇前症、妊娠合併症(薬物等使用の影響によるADHD?)、テストステロン曝露の上昇/出産後の因子:新生児仮死(アプガー)スコア(アプガースコアは多くの妊娠関連合併症と関連)、新生児疾患、母乳育児なし(Bitsko, 2022)、母親が過体重または肥満(Sanchez et al., 2018)。母乳育児の欠如と ADHD との関連性は、栄養的要因、ホルモン曝露、免疫伝達、および社会的要因を含む複数のメカニズムに関連している可能性(Silva et al., 2014 ; Tseng et al., 2019)。さらに、母乳育児は母子愛着の改善に関連しており、これは注意力の向上や児童虐待の減少にも関連している(Hayatbakhsh et al., 2012)。各要因が ADHD と関連するメカニズムは包括的に研究されておらず、おそらく異なる可能性があります。多くの場合、個々の要因が複数の作用機序を通じて神経発達に影響を与える可能性がある。

2-4.遺伝的影響
双生児研究では、ADHDの病因に対する遺伝的寄与が示されており、遺伝率の推定値は70%~80%である(Faraone & Larsson, 2019)。ADHDの遺伝率は、小児期から成人期にかけて安定していることも判明している(Bergen, Gardner, & Kendler, 2007; Chang, Lichtenstein, Asherson, & Larsson, 2013)。

2-5.神経伝達物質の影響
ADHDの子に見られる多動性については、神経学的な説明の一つとして、脳内の特定の神経伝達物質、特にドーパミンとノルエピネフリンの機能不全が関与していると考えられています。これらの神経伝達物質は、注意力、意欲、衝動のコントロールに関わる脳領域の活動を制御する役割を担っています。
研究によると、ADHDの子どもたちは、実行機能に関わる前頭前野や運動制御に関わる大脳基底核など、脳の特定の領域でドーパミンとノルエピネフリンの濃度が低いことが分かっています。この神経伝達物質のバランスが崩れることで、注意や行動の調節が難しくなります。

3.脳の構造的影響
脳画像研究により、ADHDの子どもたちは、前頭前野大脳基底核、小脳などいくつかの領域で脳の構造や機能に変化が見られることが分かっています。これらの脳領域は、運動制御、注意、実行機能に関与しており、その機能不全がADHDに見られる多動性や衝動性の一因になっている可能性があります。

3-1.大脳基底核と小脳
大脳基底核と小脳は運動制御に関わる重要な脳領域で、運動や姿勢の調節に重要な役割を担っています。大脳基底核は運動行動や意欲の調節に重要な役割を担っており、これらはADHDの多動性や衝動性の症状と密接に関連しています。大脳基底核の機能不全は、さまざまな運動障害や意欲の低下を引き起こし、これらの症状の発症の一因となる可能性があります。
研究により、大脳基底核と小脳がADHDで観察される多動に関与している可能性が示唆されています。特に、大脳基底核の機能障害は運動活動の亢進につながり、小脳の機能障害は運動協調や平衡感覚の問題の一因となる可能性があります。
MRIfMRIなどのさまざまな画像技術を用いた研究により、ADHDの子どもは、定型発達の子どもと比較して、大脳基底核や小脳の大きさや活動に違いがあることが示されています。例えば、ある研究では、ADHDの子どもは、定型発達の子どもと比較して大脳基底核の体積が小さく、この違いが多動症状と関連していることがわかりました。
また、別の研究では、ADHDの子どもは、細かい運動制御を必要とする課題中の小脳の活性化が低下していることがわかり、ADHDの運動協調障害に小脳が関与している可能性が示唆されました。
さらに、大脳基底核と小脳は相互に関連しており、これらの領域の一方の機能障害が他方に影響を及ぼす可能性があるという証拠もある。例えば、大脳基底核の機能障害が小脳の代償性変化を引き起こし、それが多動症状の一因となる可能性があることが研究で示唆されています。
大脳基底核の機能:大脳基底核は、尾状核被殻淡蒼球黒質など、脳の深部に位置する皮質下構造で、相互に連結しています。大脳基底核は、運動制御、認知、感情、意欲に関連する幅広い機能に関与している。特に、多動性、衝動性に関連して、大脳基底核は運動行動の調節と不要な動きの抑制に重要である。大脳基底核の機能障害は、ADHDの多動性と衝動性の発症に関与しているとされています。
多動性と衝動性に関連する大脳基底核の重要な機能の1つは、随意運動の制御である。大脳基底核は大脳皮質からの入力を受け、その情報をもとに視床と脳幹の活動を調節することで運動行動を制御しています。これにより、運動動作の開始、実行、終了、および不要な動作の抑制が可能になります。大脳基底核の機能障害は、ADHDの多動性や衝動性によく見られるチック症や不随意運動などの運動障害につながることが研究により明らかになっています。
多動性と衝動性に関連する大脳基底核のもう一つの重要な機能は、報酬と動機づけの調節です。大脳基底核は、報酬処理と動機づけに関与する中辺縁系ドーパミン系からの入力を受けています。
研究によると、大脳基底核の機能障害は報酬処理の変化につながり、それがADHDの多動性と衝動性の発達に寄与する可能性があることが示されています。例えば、ADHDの子どもたちは大脳基底核ドーパミン機能が低下していることが研究で示唆されており、これが意欲の低下や刺激に対する欲求の増加につながる可能性があります。

3-2.前頭前野
前頭前野(と扁桃体)は、注意、感情、行動の調節に関わる2つの重要な脳領域です。これらの領域の機能不全は、多動性を含むADHDの様々な症状と関連しています。
前頭前野は、意思決定、衝動制御、計画などの実行機能に関与しています。前頭前野の機能障害は、ADHDの衝動性や多動性の特徴である行動の抑制や満足を遅らせることの難しさなど、これらの機能の障害と関連があるとされています。
研究により、前頭前野の機能障害は、注意や行動の調節に影響を与えることで、ADHDの多動に寄与している可能性が示唆されています。例えば、ADHDの子どもは、注意や抑制制御を必要とするタスク中に前頭前野の活性化が低下していることが研究で示されています。
さらに、前頭前野は、大脳基底核や小脳など、注意や行動の制御に関わる他の脳領域と相互に関連しているという証拠もある。これらの領域の機能不全は、前頭前野の機能に影響を与え、ADHDで観察される多動性に寄与する可能性があります。

3-3.扁桃体
扁桃体は、感情の制御、特に脅威やストレスに対する反応に関与しています。扁桃体の機能不全は、ADHDを含む様々な精神疾患における感情調節障害や衝動性と関連しています。
研究により、扁桃体の機能不全は、感情の調節や反応性に影響を与えることで、ADHDの多動性に寄与する可能性が示唆されています。例えば、ADHDの子どもは、恐怖や怒りを表す顔などの情動刺激に反応して、扁桃体の活性化が増加することが研究で示されています。
ADHDの子どもは、感情的な表情の解読に全般的な欠損を示し、怒りと悲しみの識別に特異的な欠損がみられた。ADHD群では、対人関係の問題と感情的な表情の解読障害との間に有意な相関があり、それは怒りの表情でより顕著であった(Pelc et al., 2006)。
扁桃体の活動はADHDの青少年で大きく、扁桃体と外側前頭前野(LPFC)の間に大きな連結が検出された。ADHDの青少年において、恐怖処理の神経基盤・扁桃体とLPFCの間の結合が非典型的であった(Posner et al., 2011)。
さらに、扁桃体は、前頭前野をはじめとする注意や行動の調節に関わる他の脳領域と相互に関連しているという証拠もある。これらの領域の機能不全は、扁桃体の機能に影響を与え、ADHDで観察される感情調節障害や多動に寄与する可能性があります。
結論として、ADHDの子どもたちは、ドーパミンやノルエピネフリンなどの神経伝達物質の機能障害や、運動制御や注意に関わる領域の脳の構造や機能の変化により、多動性を経験すると考えられます。

4.攻撃性の鑑別(ADHDかそうじゃないか)
 児童精神科や小児科からの紹介でありがちなのが、“衝動的に攻撃する子だからADHDだろう。ADHD治療薬を処方しよう”→“効果ない?じゃあ量増やそう”→“これ以上増やせません。児相に相談してみたら?”のコンボ。
 虐待・マルトリートメントが絡む場合の攻撃性について、医療系の方々は経験がない場合があるんだろうなと思いましたし、効果がない理由を検討する専門性の材料も持ち合わせてなかったりするんだろうなと。
 「衝動的に攻撃している(ように見える)」場合、どのような可能性があるんでしょうか。

4-1.ADHDベースの場合
こちらは単純に考えてよいと思います。衝動性の高さのため、不快感による行動化を自己統制できず、行動に直結させてしまう、というものです。

4-2.反応的攻撃性の場合
反応的攻撃性:(a)怒り,憤怒,敵意を必ず伴う,(b)欲求不満や知覚された挑発に反応して起こる(特に対人関係において),(c)不快な情動状態を鎮めるというより初歩的な目的によって動機づけられる攻撃性,である(Rosell & Siever, 2015)。
反応的攻撃性は虐待歴(Dodge,Lochman,Harnish,Bates, & Pettit 1997,Kolla,Malcolm,Attard,Arenovich,Blackwood & Hodgins, 2013),負の感情性,衝動性(Cima,Raine,Meesters & Popma,2013 ; Raine,Dodge & Loeber,2006)と関連。さらに,社会的手がかりに敵意を過剰に帰属させる傾向,すなわち敵意帰属バイアスは反応的攻撃性と関連 (Arsenio, Adams & Gold ,2009 ; Hubbard, Dodge, Cillessen, Coie & Schwartz ,2001)。攻撃性に関連する刺激による注意の干渉は,反応的攻撃性と相関がある(Brugman, Lobbestael & Arntz, 2015)。


※引用が明記されていない個所はChatGPTを使用して作成してみました。間違いがあればご指摘ください!!

引用文献
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社会的(語用論的)コミュニケーション症(Social (Pragmatic) Communication Disorder:SPCD/SCD(SPCD))

大学院の課題でカプラン(Sadock et al., 2016)をベースにまとめたものです。せっかくなのでこちらにも。
いわゆるASDと混同されがちな診断、という印象です。
ASDと思っていた子が実はSPCDだった、なんてことは結構ある気がします。

0.概要
言語障害の一つ。かつては「広汎性発達障害」と分類されていたが、DSM-5で社会的(語用論的)コミュニケーション症と新たに追加された。コミュニケーションの社会的使用における持続的な障害で、自閉スペクトラム症ASD)とは異なり特定の物事に対する興味の偏りや反復的行動は伴わない。
この障害は、言語使用の社会における決まり事や身振り、社会的文脈を理解したりそれらに従ったりすることが難しいという形で現れる。本障害は音声言語の習得の遅れに加え、現在/生涯の構造的言語障害が挙げられ、ADHD、LD、行動障害などの症状が見られることも報告されている。
SCD(SPCD)の歴史と概念の源について、著者や研究施設によって使用される用語は異なり、そのような子どもは「意味語用法症候群」「意味語用法的困難」「会話障害」「語用法障害」「意味語用法障害」そして最近では「語用性言語障害(PLI)」として報告されている。従来、PLIを持つ子どもたちは、社会的文脈における言語や身振りの不適切/非有効な使用を示すと定義され11、PLI児の言語の構造的要素(語彙や文法など)は比較的保たれているが、文脈に依存した言語の使用や理解、言語使用の社会的ルールや慣習に従うことは損なわれていた。ASDs児によく見られる反復的、制限的行動や興味を示さない子どもが大半を占めていると報告されている。そのため、言語障害文献におけるPLIと児童精神医学文献における高機能自閉症アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)との類似点・相違点が指摘され、その概念の収束性・発散性が議論されてきた。
SPCDがDSM-5に導入された理由としては、限定された反復的な興味や行動は見られないがゆえにASDの診断基準を満たさないけれども、コミュニケーション困難な児童を考慮してのことである。SPCDは使われた単語を理解するだけでなく、社会的環境の理解の中にフレーズを統合させて意味を推測する能力を包含する。
本障害の診断の問題点としては、DSM-5 に記載されているように、SCD(SPCD) の概念は曖昧で、LD、PLI、ASD との関係が特定されておらず、高い併存率を示し、その時間的安定性が明らかでないため、診断の妥当性に問題がある。

1.疫学
 有病率の推定は困難。言語障害のある家族の3分の1は、少なくとも軽度/中等度の社会的コミュニケーション障害(36.6%)および制限された関心と反復的行動(43.3%)を示した。また、非感染者の一部も、軽度/中等度レベルの社会的コミュニケーション障害(両親=10.1%、兄弟姉妹=11.6%)および制限された興味と反復的行動(両親=14.0%、兄弟姉妹=22.1%)を呈していた。しかしこれらのデータは、社会的コミュニケーション障害と制限された興味と反復行動の両方を持ちながら臨床サービスを必要としている子どものプロファイルを、SPCDが捉えていないことを示唆している。

2.病因
 コミュニケーション症、ASD、限局性学習症の家族歴があると、社会的(語用論的)コミュニケーション症のリスクが高まるため、この障害の発生には遺伝的な影響が関係していると考えられている。しかし、言語症やADHDの合併の多さを考えると、遺伝以外に環境や発達上の問題も関係している可能性がある。
 SCD(SPCD)の神経解剖学について、ASD男児において、両側の内側尾状頭の変形が社会的コミュニケーションの問題と相関していることと上縦束と前頭葉アスラント路の分数異方性がSCQの社会的相互作用下位尺度と関連すること、ASD の青年・若年成人において、右前頭葉の完全性が社会的コミュニケーション質問票(SCQ)の下位スコアと強い相関があること、ASDの一卵性双生児において、社会コミュニケーションの障害が小脳底の変化と相関していることなどが報告されている。

3.診断と臨床的特徴
 臨床的特徴
 SPCDの特徴としては、暗示的な文章や、比喩、ユーモア、格言などの間接的な言葉の使い方の処理に障害がある。また、文脈に応じた挨拶、会話の順番待ち、文脈に応じた行動の調整など、言語的なコミュニケーションに加え、非言語的なコミュニケーションの問題も見られる。そして限定された反復的な行動様式は認めない。
 診断基準(DSM-5)
A.言語的および非言語的なコミュニケーションの社会的使用における持続的な困難さで、以下のうちすべてによって明らかになる。
1. 社会的状況に適切な様式で、挨拶や情報を共有するといった社会的な目的でコミュニケーションを用いることの欠陥)
2. 遊び場と教室とで喋り方を変える、相手が大人か子どもかで話し方を変える、過度に堅苦しい言葉を避けるなど、状況や聞き手の要求に合わせてコミュニケーションを変えるための能力の障害
3. 会話で相づちを打つ、誤解されたときに言い換える、相互関係を調整するための言語的および非言語的な合図の使い方を理解するなど、会話や話術のルールに従うことの困難さ
4. 明確に示されていないこと(例:推測すること)や、字義どおりでなかったりあいまいであったりする言葉の意味(例:慣用句、ユーモア、隠喩、解釈の状況によっては複数の意味をもつ話)を理解することの困難さ
B.それらの欠陥は、効果的なコミュニケーション、社会参加、社会的関係、学業成績、および職業的遂行能力の1つまたは複数に機能的制限をもたらす。
C.症状は発達期早期より出現している(しかし、能力の限界を超えた社会的コミュニケーションが要求されるまでは、その欠陥は完全には明らかにならないかもしれない)。
D.その状況は他の医学的または神経疾患、および言語の構造や文法の領域における能力の低さによるものではなく、自閉スペクトラム症、知的能力障害(知的発達症)、全般的発達遅延、および他の精神疾患ではうまく説明されない。

4.鑑別診断
ASDASDで限定された反復的な興味や行動が発達早期で顕著であったが徐々に目立たなくなることも多い。この特徴が現在認められなくても過去に認められればASDと診断され、SPCDとは診断されない。あくまでもSPCDは「限定された反復的な興味や行動が一度も認められなかったときの診断」である。
社交不安症:社交不安症では、対人関係のコミュニケーション能力は保たれているが、不安を感じる社会的状況ではその能力が発揮されないものである。一方SPCDでは、適切な対人関係のコミュニケーションスキルがどの場面でも見られない。
知的障害:知的障害のためにコミュニケーション能力が障害されている子どもがSPCDと混同される可能性もある。SPCD診断は対人関係のコミュニケーション能力の障害が明らかに知的能力障害よりも重度の場合に飲み下されるべきである。

5.経過と予後
 個人差が大きく、何もしなくても数年で改善する人もいれば、大人になっても困難が持続する人もいる。5歳までにはほとんどの患児が対人コミュニケーションの障害があるとはっきりわかるような話し言葉と言語能力を呈するようになる。例え症状は改善しても、幼少期にこの障害があったことで生じた学業成績や対人関係の問題が長引くこともある。

6.治療・介入
 治療で明確なエビデンスのあるものはほとんどない。動物モデルや初期の臨床試験のデータから、N-methyl-D-aspartate モジュレーター、γ-アミノ酪酸アゴニスト、メタボトロピックグルタミン酸受容体アンタゴニスト、神経ペプチドなどの新規および既存の化合物は、ASD における社会的コミュニケーション/機能を高める可能性があることが示唆されている 。一方、心の理論や拡張/代替コミュニケーションへの介入は、ASDの社会的コミュニケーションに影響を与えないことが示されたが、SCD(SPCD)の子どもへの影響(もしあるならば)はまだ不明である。

参考文献
Flax, J., Gwin, C., Wilson, S., Fradkin, Y., Buyske, S., & Brzustowicz, L. (2019). Social (pragmatic) communication disorder: Another name for the broad autism phenotype?. Autism, 23(8), 1982-1992.
Sadock BJ, Sadock VA, Ruiz P, 井上令一,四宮滋子,田宮 聡. (2016). カプラン臨床精神医学テキストDSM-5診断基準の臨床への展開 第3版. メディカル・サイエンス・インターナショナル.
Topal, Z., Samurcu, N. D., Taskiran, S., Tufan, A. E., & Semerci, B. (2018). Social communication disorder: A narrative review on current insights. Neuropsychiatric disease and treatment, 14, 2039.

施設入所した児童と実親との面会交流のポジティブ/ネガティブ効果

子どもが施設や里親に行った場合であっても、家族や子供には親と面会交流する権利があります。もちろん、場合によっては加害者と子どもの面会を拒むことは可能ですが、それはまた別の機会に話題にするとして、
虐待加害者が親だったとして、その親と面会をさせることの意義ってどこにあるんでしょうか。
完全な主観ですが、福祉司はケースワークを進める目的や保護者との関係構築のために面会交流に前向きである傾向があるように感じますし、一方で心理担当は子どもの不安などを理由に後ろ向きな場合もあるように感じます。
ここでは、養護施設や里親に委託中の児童が親と面会交流することで、どのような効果があるのかなどを確認していきたいと思います。

児童養護施設にいる間に子どもが実の親と接触すること自体は、子どもの継続的な身体的・精神的成長(Ainsworth, 1989; Hess, 1982)、子どものより良い全体的適応(Hess, 1988)、子どもの情緒的幸福(Hess, 1988; Oyserman & Benbenishty, 1992)にとって有益とされています。また母親と父親の両方との接触頻度が高いほど精神症状の低減と関連し、兄弟姉妹から引き離されることもまた、より多くの精神衛生上の問題と関連していたことがわかっています(McWey & Cui, 2021)。
親と会えるだけでもプラスの効果が期待できるということです。


また、面会交流は1度だけではありません。多くの場合は定期的な交流を目指していくことになると思います。
両親や親族との定期的な接触は、情緒的・行動的問題に対してプラスの効果があり(Simesk et al., 2007)、実の親と定期的に面会している子どもは、まったく面会していない子どもよりも問題行動が少ない(Cantos, Gris, & Slis, 1997)、という報告があります。さらに、実母との接触がない子どもは、外在化行動(問題行動)が最も多く、接触回数が少なかった子どもは外在化行動がわずかに少なく、接触が最も多い子どもは、外向的行動が最も少ない(McWey et al., 2010)、という結果も得られています。
①質の低い面会を経験した子どもたちは、面会する親からの温かみが少なく、批判や拒絶をより多く感じていたため、専門家は、面会交流の質を高めるために必要なスキルを身につけ、関係者全員(子ども、実親、里親)に十分な準備と支援を提供することが重要ということ、②接触面会(より頻繁な)は、生みの親との絆を強化し、家族の再統合を促進し、子どもの幸福に貢献する可能性が高い(Ruiz-Romero et al., 2022)、といった報告もあり、質の高い情緒的交流のある面会を実施することが望ましいことも分かっています。

回数に加えて定期性も含めてみます。
再統合が目標である家庭においては、実親との接触がより一貫して頻繁である子どもは、接触が少ない子どもよりも行動上の問題が少なく、精神科の薬を服用する可能性が低く、「発達の遅れ」と呼ばれる可能性が低かった。(McWey & Mullis, 2004)との報告があります。

このように、複数回の交流や、定期的な交流は、子どもの行動・発達上の問題リスクを低減する働きがあることが分かります。

しかし、面会交流が負の影響を及ぼすこともあります。
それは交流が「一貫しない」場合のようです。
実の親との接触パターンが(定期的で頻繁な面会とは対照的に)一貫していない方が、まったく接触しないよりも抑うつが大きくなる(McWey et al., 2010)。
親が一切の接触を拒否した場合、子どもは拒否されたことを受け入れ、前に進もうとする余地が与えられるため、一貫しない接触よりも接触しない方がよい(Moyer et al., 2006)。

以上、解釈も含めた先行研究を紹介しましたが、いったん整理します。
交流方法:一貫性を持たせて定期的に実施していくことが望ましいようでした。質の高い、情緒的交流のある面会であることも求められているようでした。現場感覚とも一致していると思います。
プラス面:情緒的・行動的問題の緩和、情緒的幸福、身体・精神的成長、服薬・発達的問題リスク低下、適応全般の向上
マイナス面:一貫しない交流は抑うつ憎悪
以上のようになります。

一貫した交流が子どもにとって望ましいからと言って、なんでもかんでも交流をしまくればええんや、というものではありません。
当然、加害者と被害児童との関係性が重要です。
たとえば「虐待を認めていない」「加害性が低減していない」など、交流時に加害リスクがあるケースや、子どもが親の加害に対する不安が高いケースなどは、交流自体が子どもの心理面に強い負担を強いることになります。
親からの見捨てられ不安より、交流時の再被害への不安の方が強い場合は、交流の中止を検討する必要があるんじゃないかと思います。
少なくとも、加害者が虐待についての内省を進めており、交流時の再発リスクは低いといえる状態において、一貫した面会交流を継続していくことが望ましいといえると思います。

引用文献
Ainsworth, M., Blehar, M. C., Waters, E., & Wall, S. (1978). Patterns of attachment: A psychological study of the strange situation. Hillsdale, NJ: Erlbaum.
Cantos, A. L., Gries, L. T., & Slis, V. (1997). Behavioral correlates of parental visiting during family foster care. Child Welfare, 76, 309 – 329.
Hess, P.(1982). Parent-child attachment concept: Crucial for permanency plan-ning.Social Casework,63, 46–53.
Hess, P.(1988). Case and context: Determinants of planned visit frequency infoster family care. Child Welfare,67, 311–326.
McWey, L. M., & Mullis, A. K. (2004). Improving the lives of children in foster care: The impact of supervised visitation. Family Relations, 53(3), 293-300.
McWey, L. M., Acock, A., & Porter, B. E. (2010). The impact of continued contact with biological parents upon the mental health of children in foster care. Children and youth services review, 32(10), 1338-1345.
McWey, L. M., & Cui, M. (2021). More contact with biological parents predicts shorter length of time in out of home care and mental health of youth in the child welfare system. Children and youth services review, 128, 106164.
Ruiz-Romero, K. J., Salas, M. D., Fernández-Baena, F. J., & González-Pasarín, L. (2022). Is contact with birth parents beneficial to children in non-kinship foster care? A scoping review of the evidence. Children and Youth Services Review, 143, 106658.
Oyserman, D., & Benbenishty, R.(1992). Keeping in touch: Ecological factorsrelated to foster care visitation.Child and Adolescent Social Work Journal,9,541–554.
Simsek, Z., Erol, N., Öztop, D., & Münir, K. (2007). Prevalence and predictors of emotional and behavioral problems reported by teachers among institutionally reared children and adolescents in Turkish orphanages compared with community controls. Children and youth services review, 29(7), 883-899.

被虐待児の感情コントロール:感情ラベリング(Affect Labeling: LA)

0.感情コントロール方法:感情コントロールなんてできるの?
 虐待を受けた児童のケアやアセスメントの中で、感情コントロールに課題を抱えている子どもは多いです。
 もちろん、その子ども自身の問題や責任という訳でなく、虐待や生来的な衝動性といった外的要因や神経的要因に寄与していることが多く、対応は非常に困難なことが多いです。
 特に今回は、虐待といった外的要因のために感情コントロールに課題を抱えている子どもに対して、エビデンスのある、かつ比較的簡便で実施しやすい手法「感情ラベリング( Affect Labeling)」について紹介できればと思います。

1.感情ラベリング( Affect Labeling) って何?
感情ラベリングは、「感情を言葉にする」と表現される感情調整戦略です。具体的には、自分の感情状態(通常はネガティブな状態)に明示的に感情を表現するワードを用いてラベリングすることです。
たとえば実験などでは、写真の表情からこの人はどのような感情をもつかを言語化してもらうといったものが有名です。日常的には、恐怖場面などで自分の感情を“怖い”“不安”などラべリングする、といったものが感情ラベリングに該当します。この感情ラベリングを行う効果として
扁桃体優位でなく前頭前野優位の状態になる
扁桃体優位な反応=恐怖等への防御反応(有害な反応:攻撃行動)が減少する
という機序が想定できるものです。
実験の結果から、感情ラベリングによって扁桃体の覚醒が低下し、前頭葉が活性化するといった結果が得られています。後ほど詳細を紹介します。
扁桃体は、不安や恐怖に対する防衛反応に寄与する部位として有名で、この防衛反応が4つのFと言われる反応だったりし、このうちの1つに「攻撃反応(Fight)」があります。扁桃体が覚醒し、攻撃反応を表出することで、攻撃的な不適応行動に繋がるというものです。
もちろん攻撃反応以外にも逃走反応(Flight)などがあり、必要な場面で回避的な行動を頻発する児童などがこれに該当すると思われます。
この攻撃反応や逃走反応は、不適応行動として認められる場面が多いです。

児童相談所では、「不適応行動化リスクを下げ、言語化可能性を高める」ために用いることが多いです。また、大人が子どもの感情をラベリングしてくれることで、子どもにとっての受容感を高める効果もあるんじゃないかと感じています。

以下、感情ラベリングについての根拠を述べていこうと思います。

2.感情ラベリングってどのような効果があるの?
感情ラベリングを実施することで、その感情状態から生じる意識的な経験、生理的反応、および/または行動が減少する。具体的には、主観的な情動感情の低下、扁桃体の活動の低下、恐怖刺激に対する皮膚コンダクタンス反応の低下など、感情ラベリングの情動調節効果が示されてます(Torre, & Lieberman, 2018)。たとえ誰かが自分の感情を調節しようと思っていない場合でも、自分の感情にラベルを付けるという行為にはプラスの効果があることが報告されています(Lieberman et al.,2011)。
感情ラベリングはラベリングのタイミングによらず、効率的に苦痛を低下させる一方、強度の高い嫌悪条件では苦痛を減少させるが、強度の低い条件では苦痛を増加させることも明らかになています(Levy-Gigi & Shamay-Tsoory, 2022)。

3.感情ラベリングの神経科学的根拠
感情ラベリングに取り組むと、感情刺激を含む他のタスクと比較して、腹外側前頭前皮質(vlPFC)の脳活動が高くなり、扁桃体の活動が低下することが研究で明らかになっています( Burklund et al., 2015 ; Lieberman et al., 2007)。さらに、脳病変研究からも、vlPFCが感情ラベリングのプロセスに関わることが指摘されています。右のvlPFCに病変がある被験者は、映画を通して登場人物の感情状態を識別する能力が低かった。このことは、感情ラベリングが行われるためには、この領域が必要であることを示唆している(Goodkind et al., 2012)。さらにメタアナリシスにより、扁桃体は感情刺激を伴うタスクで活動することが分かっているが、刺激を単に受動的に見るのではなく、感情を特定しなければならない場合には活動が低くなることが示されています(Costafreda et al., 2008)。
これらの知見を統合する1つの理論は、vlPFCが感情ラベリング中に扁桃体の活動を低下させるように働くことを提案しています(Young et al., 2019)。さらに研究者は動的因果モデリングを使って、vlPFCにおける活動の増大は低い扁桃体活動の原因となることを明確に示しています(Torrisi et al., 2013)。

4.感情ラベリングをどのように活用するの?
使用するタイミングについて、基本的には日常から常に使用していくのが良いと思います。
 また、何か児童に不適応行動が生じたときに、大人側がこれを一緒にやっていくのが望ましいと思います。その際、日常的に感情のラベリングに慣れていないと「ぶっ殺したいからぶっ殺したいんだよ」のようなデ●ジ君や進●郎議員状態になってしまうので、普段から感情ラベリングを使い慣れているのが良いかなと思います。

5.まとめ
 感情のラベリングはひとつの技術ですが、これの良いポイントは「俺の気持ちに共感してくれた」感を感じてもらえる可能性が高いところです。虐待などで傷つき、大人に心を大切にしてもらえなかった子どもたちが、自分の感情に触れてくれる感覚を抱いてくれたら、それは子どもへの心理支援として大きな意義があるのではないかなと思っています。
 また、日常的に忙しい支援者さん達にとって、特別な場面を設定しない・日常の声掛けで対応できる点も優れている部分かなと思います。
 支援者も子どもも、お互いが自身の感情を肯定的にシェアできる環境が作られれば、行動的な面だけでなく心理的にもおだやかな生活を送れる可能性が高まるのではないかなと思います。感情ラベリング、ぜひ活用してみてください。


引用文献
Burklund LJ, Craske MG, Taylor SE, Lieberman MD (2015). "Altered emotion regulation capacity in social phobia as a function of comorbidity". Social Cognitive and Affective Neuroscience. 10 (2): 199–208. doi:10.1093/scan/nsu058
Costafreda SG, Brammer MJ, David AS, Fu CH (2008). "Predictors of amygdala activation during the processing of emotional stimuli: a meta-analysis of 385 PET and fMRI studies". Brain Research Reviews. 58 (1): 57–70. doi:10.1016/j.brainresrev.2007.10.012
Goodkind MS, Sollberger M, Gyurak A, Rosen HJ, Rankin KP, Miller B, Levenson R (2012). "Tracking emotional valence: the role of the orbitofrontal cortex". Human Brain Mapping. 33 (4): 753–62. doi:10.1002/hbm.21251
Levy-Gigi, E., & Shamay-Tsoory, S. (2022). Affect labeling: The role of timing and intensity. Plos one, 17(12), e0279303.
Lieberman MD, Eisenberger NI, Crockett MJ, Tom SM, Pfeifer JH, Way BM (2007). "Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli". Psychological Science. 18 (5): 421–8. doi:10.1111/j.1467-9280.2007.01916.x.
Lieberman MD, Inagaki TK, Tabibnia G, Crockett MJ (2011). "Subjective responses to emotional stimuli during labeling, reappraisal, and distraction". Emotion. 11 (3): 468–80. doi:10.1037/a0023503.
Torre, JB, & Lieberman, MD. (2018). Putting feelings into words: Affect labeling as implicit emotion regulation. Emotion Review, 10(2), 116-124. doi:10.1177/1754073917742706.
Torrisi SJ, Lieberman MD, Bookheimer SY, Altshuler LL (2013). "Advancing understanding of affect labeling with dynamic causal modeling". NeuroImage. 82: 481–8. doi:10.1016/j.neuroimage.2013.06.025
Young, KS, LeBeau, RT, Niles, AN, Hsu, KJ, Burklund, LJ, Mesri, B, Saxbe, D, Lieberman, MD, Craske, MG.(2019). "Neural connectivity during affect labeling predicts treatment response to psychological therapies for social anxiety disorder". Journal of Affective Disorders. 242: 105–110. doi:10.1016/j.jad.2018.08.016

児童虐待の子どもへの影響(簡易ver)

虐待の影響について、ほぼ箇条書きでまとめてみました(脳への影響についての詳細を除く)。
最初に概要をお伝えすると、
認知・心理状態:表情認知、共感性、報酬処理、短期記憶、言語能力、負の刺激への過敏性、行動統制力(衝動性)、自分で感情の動揺を抑えられないという思考
脳機能の低下:海馬(記憶)、扁桃体(感情)、前頭前野(実行機能系)、前帯状回(社会性)
の2本柱があって、そこに感情調節障害が媒介し、不適応行動やトラウマ症状、精神疾患に繋がっていくというイメージです。

1.虐待全般の影響
全般児童虐待への暴露は,ストレスホルモンが発達中の脳の構造にダメージを与え,行動問題,学習,心理社会的,身体的,精神的健康問題に生涯にわたる障害をもたらすことに加え(Bruce,Gunnar,Pears,& Fisher,2013;Larkin et al.,2014),感情調節障害や行動上の問題を引き起こし,生涯にわたって良好な人間関係を形成し維持する能力に影響を及ぼす(Dube et al., 2002)。
再被害リスク:幼少期に身体的または性的虐待を経験したり,IPV(=DV)を目撃したりすると,IPVの被害や加害のリスクが約2倍高まる(Dube, Anda, Felitti, Edwards, & Williamson, 2002; Whitfield, Anda, Dube, & Felitti, 2003)。
子どもの頃に経験した暴力体験の数と,成人後のIPVリスクには,用量効果があることを発見した。具体的には,幼少期に3つの暴力を経験した人の場合,IPVの被害者になるリスクは女性で3.5倍,加害者になるリスクは男性で3.8倍に増加する(Whitfield et al.,2003)。
表情認知児童虐待は,怒った顔や悲しい顔に対する反応時間の短縮に関連したが,正確さは正常であった。恐怖顔や幸せ顔では,最近児童虐待に暴露された人だけが,精度の低下と関連していた。この効果は,3歳以前に児童虐待に暴露された人でより顕著であった(Saarinen et al., 2021)。被虐待児はネガティブな顔や社会的イメージを見たときに,対照群と比較して扁桃体の活動が高まる(McCrory et al., 2011; McLaughlin et al., 2015)。一方,認知的再評価を用いて否定的刺激に対する感情を調節しようとする能動時には,前頭前野活動が増強された(McLaughlin et al., 2015)。
共感性心理的虐待(IPV目撃除)(β = -0.150)とネグレクト(β = -0.137)は,8歳時点での共感性の低下を予測したが,身体的虐待(β = 0.132) とIPVへの曝露(β = 0.164)は,8歳時点での共感性の向上を予測した。さらに,子どもの母親像に対する否定的な表象は,身体的虐待と共感性の正の関連を緩和し(β = -0.177),否定的な表象が増えるほど関連は弱くなることが示された(Berzenski & Yates,2022)。
報酬処理:虐待とRP(報酬処理)の障害の関連について,メタ分析により小さいながらも関連(r = 0.12)が認められている(Oltean et al., 2022).※報酬処理:特定の刺激・状態からどのように報酬(肯定的な結果)を予測し,行動選択を行うかという処理過程。
短期記憶:被虐待経験を持つ女性(18-22歳)は対照群と比較して明らかに短期記憶能力が低下していた(Teicher et al.,2006)。
ネガティブな刺激への反応:虐待を受けた青少年は,虐待を受けなかった青少年と比較して,ネガティブ刺激(画像)暴露時の左扁桃体とセイリエンス処理領域の活性化が大きく(=意識していない刺激までキャッチしてしまう),認知制御に関わる複数の前頭葉系領域(両側上前頭回,中前頭回,背側前帯状皮質)の活性化が低下していた(Jenness et al., 2021)。
感情調節(ER)の困難:感情調節(ER)の困難は,児童虐待と精神病理をつなぐメカニズムであると考えられている(Heleniak et al., 2016 ; Weissman et al., 2019)。身体的・性的虐待や慢性的なIPVの目撃などにさらされた子どもは,感情表現に対して養育者から厳しい懲罰的反応を受けることが多く(Eisenberg, Fabes, & Murphy, 1996),反芻のような不適応なER戦略の使用をより多く示すため(Heleniak et al., 2016),子どもが感情反応を効果的に調節すること(適応的なER)がより困難になると考えられる。
問題行動:身体的,性的,言葉による虐待を受けたり,一貫性のないネグレクトな養育を経験したりする家庭では,有害なストレスが感情,社会,認知,行動の発達と機能を阻害する。特に衝動性や注意欠陥という形で,自己や感情の調節が困難になると,攻撃性や暴力といった長期的な行動上の結果につながることがある(Dube et al.,2002)。
被虐待児の多くは,感情が意識されないことが多いため,ストレッサーや生理的覚醒によって闘争反応や逃走反応につながる。例えば,人間関係でストレッサーが得られた場合,トラウマのある人は,文脈や感情を評価する能力がないまま,刺激から反応に移ることが多く,最終的に過剰反応,暴力,脅迫につながる(van der Kolk, 1994, van der Kolk, 2014)。

2.IPV目撃(=心理的虐待)の影響
・精神発達病理学的説明
低社会経済状態,低所得で治安の悪い地域,地域暴力への曝露,養育者の精神的ヘルスの低下,過酷な子育て,子どもの虐待を含む追加の重大なリスク要因がある中でIPVへの曝露が起こると,追加のリスク要因に曝露されていないIPV被害児と比較して,子どもはより悪い短期および長期適応を示す(Aifi et al., 2011; Afifi et al., 2014; Campbell, Walker, & Egede, 2016; Coêlho, Andrade, Borges, Viana, & Wang, 2016; Fuller-Thomson, Roane, & Brennenstuhl, 2016; Gilbert et al, 2015; Hagan, Sulik, & Lieberman, 2016; Hanson et al., 2006a, Hanson et al., 2006b; Hodges et al., 2013; Kennedy, Bybee, Sullivan, & Greeson, 2010; McLaughlin, Conron, Koenen, & Gilman, 2010).
トラウマ反応がもっとも重篤なのが,「IPV目撃と暴言による虐待」の組み合わせだった。つまり,身体的虐待やネグレクトを受けた人よりも,親のIPVを目撃し,かつ自分も言葉でののしられた人の方が,トラウマ症状が重篤であった(Teicher et al., 2006)。
各パターンのIPV(すなわち、両親間の暴力を目撃し、親の暴力を経験すること)暴露は、より高いレベルの心的外傷後ストレス症状(PTSS)を予測する(Muhammad et al ,2019)。
IPV暴露は、10歳時点での受容語彙力(d=0.26)、一般言語力(d=0.23)、語用論的言語力(d=0.41)の能力低下を示すスコアと関連(Laura et al.,2021)。

・社会的学習理論
IPV曝露の若者は,行為問題,攻撃的・反抗的行動などの児童期の外在化問題,および思春期や成人期の法律違反,逸脱,攻撃的行動を示すリスクが著しく高まる(Espelage, Low, Rao, Hong, & Little, 2014; Fagan & Wright, 2011; Foshee et al, 2015; Graham-Bermann & Perkins, 2010; Huang, Vikse, Lu, & Yi, 2015; Knous-Westfall, Ehrensaft, Watson MacDonell, & Cohen, 2012; Latzman, Vivolo-Kantor, Niolon, & Ghazarian, 2015; Lee et al, 2016; Lucas, Jernbro, Tindberg, & Janson, 2016; Ma et al., 2016; Narayan et al., 2014; Palmetto, Davidson, Breitbart, & Rickert, 2013; Temple et al., 2013; Tyler & Schmitz, 2015; Vogel & Keith, 2015; Zarling et al., 2013) 。
しかし身体的攻撃性は2歳から3歳の間にピークに達した後はほとんどの個人で着実に減少しており(Ogilvie, Newman, Todd, & Peck, 2014),攻撃的な行動に事前に触れることなく暴力の使用に関する好ましい態度や価値観を身につけるといった報告から(Weerman,2011),IPVにさらされた子どもにおいて暴力を発症する/発症しないを区別する変数の存在が示唆されている(Dardis, Dixon, Edwards, & Turchik, 2015).

・愛着理論
IPVにさらされた子どもは,基本的な愛着欲求が満たされにくく,ネガティブなIWM(内的作業モデル)や関係パターンを身につけやすく,愛着者を潜在的な危険源として対処しなければならない(Godbout,Dutton,Lussier,& Sabourin,2009)。
IPVにさらされた子どもは,養育者に対して不安定な愛着や無秩序な愛着を形成し,成人後もこうした愛着スタイルを維持する可能性が高い(Berdot-Talmier et al.2016; Muller, Sicoli, & Lemieux, 2000; Waters, Merrick, Treboux, Crowell, & Albersheim, 2000; Weinfield, Sroufe, & Egeland, 2000)。
母子関係の質がIPV曝露後の子どもの規範的機能の最も重要な予測因子の一つであり,これらの子どものレジリエンスと精神病理のプロファイルを識別する因子の一つである(Graham-Bermann et al., 2009; Miller-Graff, Cater, Howell, & Graham-Bermann, 2016; Skopp, McDonald, Jouriles, & Rosenfield, 2007)。
母親の暖かさ,敵意のなさ,精神的健康が,IPVへの曝露と子どもの適応困難を媒介・調整する(D'Andrea & Graham-Bermann, 2016; Miller-Graff, Cater, et al., 2016; Skopp et al., 2007)

神経科学的影響
「言葉による IPV」 を目撃してきた人の方が,身体的 IPV を目撃した人より,脳へのダメージが大きかった。具体的には,身体的 IPV 目撃は舌状回(視覚野の一部で夢や単語の認知に関係)の容積3.2%の減少に対し、言葉によるIPV では19.8%の減少(Tomoda et al., 2012)。

◆IPV目撃により子どもも暴力的になる?各世代間伝達モデルについての概要
・精神発達病理学的モデルに基づくIPVの世代間伝達モデル
社会経済的地位の低さ,失業,教育水準の低さ,心身の健康状態の悪さ,不安定な愛着スタイル,非効果的/否定的な育児実践,暴力行使に対する肯定的態度,司法制度への関与歴などの個人レベルおよび家族レベルの多くのリスク要因が,IPV発生リスクおよび家族内の暴力の世代間伝達を著しく高める(Ehrrensaft et al.,2003; Garrido & Taussig, 2013; Jouriles, Mueller, Rosenfield, McDonald, & Dodson, 2012; Mbilinyi et al., 2012; Minter, Longmore, Giordano, & Manning, 2015; Narayan, Englund, Carlson, & Egeland, 2014; Smith, Ireland, Park, Elwyn, & Thornberry, 2011).

・社会的学習理論に基づくIPVの世代間伝達モデル
IPVの世代間伝達に関する社会的学習モデルの経験的価値を探る文献は,部分的な支持しか得ていない(Akers, 1998; Bevan & Higgins, 2002; Boeringer, Shehan, & Akers, 1991; Cochran et al, 2011; Cochran, Jones, Jones, & Sellers, 2016; Eriksson & Mazerolle, 2015; Fritz, Slep, & O'Leary, 2012; Jennings, Park, Tomsich, Gover, & Akers, 2011; Sellers et al., 2005; Zavala, 2016)。さらに,メタ分析では,幼少期のIPVへの曝露と,思春期から成人期にかけての暴力的な恋愛関係への関与との間に,弱から中程度の関連性が存在することが示唆されており(Pratt et al.,2010)、社会的学習理論のみでの説明では不十分である裏付けとなっている。

・愛着理論に基づくIPVの世代間伝達モデル
幼少期にIPVにさらされることは,不安定な愛着だけでなく無秩序な愛着の発達の重大な危険因子であり,それが男女ともに思春期から成人期にIPVの加害や被害を受ける重大な危険因子である(Allison,Bartholomew,Mayseless,& Dutton, 2007; Cameranesi, 2016; Doumas, Pearson, Elgin, & McKinley, 2008; Godbout, Lussier, & Sabourin, 2009; Godbout et al. , 2016; Sutton, Simons, Wickrama, & Futris, 2014)。
IPVは女性に対する攻撃であると同時に,介護システム全体に対する攻撃として概念化されており,世代を超えて受け継がれる傷ついたIWMは,女性(個人として,母親として)と子どもの社会的・感情的機能に悪影響を与える。このモデルによると,IPVを経験した母親は,恐怖と圧倒され,乳児の苦痛に対して,乳児が自分と同じように無力で脆弱であると認識する投影的同一化,または乳児が加害者のように攻撃的で敵対的であると認識する投影で反応することが多いという。これらの心理的歪みは,一貫性のない,敵対的な,あるいは無神経な育児行動につながり,子どもの不安定な愛着や無秩序な愛着の発達を引き起こすため,暴力の連鎖が続く可能性がある。


簡単にですが、虐待全般の影響に加えて、心理的虐待と密接なIPV(≒DV)の影響について紹介してきました。
子どもの行動や特性について、子ども自身の問題や特性だと誤って説明するのは避けるべきだし
同様に必要以上に虐待の影響だと言うのも誤りです。
どこまでが虐待の影響で、どこからが子ども本来の特性か、きちんと鑑別した上で治療計画等に臨んでいけるといいなと思います。


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反応性アタッチメント障害(Reactive Attachment Disorder:RAD)という虐待の影響

0.RADの事例
母より本児の顔を枕で押さえつける,叩く,蹴るといった身体的虐待が繰り返されて一時保護,施設入所となった1歳児童,知的には普通域で発達面に問題は無し。父は,実母へのDVに加えてギャンブルでの多額の借金を作っており,DVにより疲弊した母は仕事をしていないこともあり借金は増える一方であった。
一時保護となった本児は,表情は強張っているが,泣くことはなく,付き添いの児童相談所職員と離れるときもスムーズであった。しかし,徐々におもちゃの取り合いや養育者の取り合いで他児に暴力を振るったり怒鳴りつけたりといった行為を繰り返すようになり,注意を受けると激しく長時間泣き叫ぶかんしゃくを起こすようになった。そういった感情表出の激しさがある一方で,排泄面では不快を訴えることがなかったり,机に頭をぶつけたり他児に叩かれたり痛い思いをしても無表情でやり過ごす傾向が強いなど負の情動表出が抑制されていた。楽しい嬉しい等の表出が全くなく,感情表出は不快時の激しい行動化のみと,感情表出面のアンバランスさが目立っていった。

1.RADとは何か

RADは児童虐待界隈で働いている人はご存じの概念で,虐待を受けた児童につく診断基準として知られていると思います。愛着の傷つき,なんて言われますが,研究も進んでいて非常に複雑な知見が入り乱れる概念だなーって印象もあります。RADを児童福祉や心理系の知見だけで説明するにはかなり不足しているのですが,今回は愛着やRADをベースにした知見を元に色々と検討してみようと思います。

1-1.RADの概要
反応性愛着障害(RAD)は,幼少期の虐待やネグレクトに関連する重度の社会機能障害である(Zeanah et al., 2004)。RADの子どもは,養育者との健全な愛着を形成できず,苦悩しても慰めを求めず反応もせず,社会的・感情的な相互性を欠き,感情の調節が困難であり(Gleason et al., 2011),さらにこれらの問題は成人期を通じて持続する(van der Vegt et al., 2009)。

◆RADの疫学
施設内で育てられた幼児を対象とした研究でも,54ヶ月の子供における感情的な引きこもり/抑制型のRADの割合は,わずか4.1%であった。

◆RADの診断基準
診断基準A:成人の養育者に対して一貫して示される,抑制的で,情緒的にひきこもった行動のパターン
①子どもが苦痛を感じた際に最低限しかないし全く慰め等を求めない,②子どもが苦痛を感じた際の慰めに対してほとんどないし全く反応しない
診断基準B:持続性の社会的・情緒的混乱
①他者に対する社会的・情緒的反応が最低限しか見られない
②肯定的感情表現が抑制されている
③成人の養育者との,脅威を与えるようなものでないやり取りにおいてでさえ,説明のつかない怒りや恐怖といったネガティブな情動を示すエピソードがある
上記の条件に加えて,少なくとも子どもは9ヶ月以上の年齢で,5歳以前からその症状が出ている,また,自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準を満たさない

RADは,以前のDSMの繰り返しにおける基準(RAD-抑制型)のような社会的引きこもり行動ではなく,「基本的に誰に対しても好ましい愛着を持たない(Lyons-Ruth, Zeanah, Benoit, Madigan, & Mills-Koonce, 2014, p.698) 」と考えられるようになった。無差別な友好性は現在,Disinhibited Social EngagemenTDisorder(DSED:以前はDSM-IVでRAD-disinhibited typeと表記されていた)と表記されている。DSEDがRADの診断から切り離されたのは,無差別的な社会的行動は愛着行動と関連せず(例えば,Chisholm,1998;Rutterら,2007),衝動性や注意の問題とより密接に関連する可能性があることを示す結果が再現されているからである(Bruce,Tarullo,&Gunnar,2009;Pears,Bruce,Fisher,&Kim,2010)。
以下,愛着の障害であるRADを理解するため,まずは愛着について概観する。


1-2.愛着
 ここでは,愛着に関係のある基礎知識的なことをざーっと書き連ねていこうと思います。

1-2-1.愛着周辺の基礎知識
◆愛着(アタッチメント)とは何か
愛着は,本来母子の間に形成される恒常性を持った絆で,社会的な結びつきだけでなく,哺乳類に共有される生物学的な結びつきの仕組みだと考えられている。その根拠は,愛着現象が哺乳類に普遍的に認められる+その生物学的基盤と考えられるオキシトシン・システムをそのまま共有している事実からだ(Music,2001)
ハーロウの実験などから,愛着行動は空腹を満たすだけでなく心地よいスキンシップなど,すなわち快情動も重要な情報だと分かる。エインスワースは「安全基地」という愛着の機能を提唱している。子どもは母親との愛着を安心のよりどころとして探索行動を行い,学習や社会的体験を積んでいく。それゆえ安定した愛着は,子どもの社会性の獲得や学習をバックアップする機能を有していると考えた。
「選択性」も重要。特定の存在に対する選択的で持続的な関係が形成されるのには,臨界期が存在し,人間の場合1歳半を過ぎてしまうと愛着形成が起きにくくなってしまう(福井・岡田,2019,pp7)。
混乱型(無秩序型)の愛着は児童期に入るころから,子どもが養育者をコントロールしようとする「統制型」と呼ばれるタイプが発展してきて(Main & Solomon,1990),一部のケースでは混乱型が長く続き,そういったケースではより情緒や行動の問題が顕著である。
「おそれ型」愛着スタイル(混乱型に相当)には,潜在的な攻撃性の抑圧が存在。特に攻撃性の自己防衛的な側面(攻撃性により自己を守り,他者に働きかける機能=抗議・自己防衛・意思疎通など)が抑圧されている。
「他者への不信感と自尊心の低さからなる内的作業モデル」のために,愛着の撤去を恐れて攻撃性を抑圧することで,関係が危機的になり,自己の防衛が破たんの脅威にさらされると,逆に制御不能な激しい攻撃性を表出するという流れ。

◆愛着と内的作業モデル(Internal Working Models:IWM)
内的作業モデル(IWM)とはボウルビィが提唱した,乳幼児期の親子関係の中で形成される対人表象についてのモデルであり,私は〇〇したら~~してもらえる,××な時は~~ってなるの積み重ねで,単純には対人関係の応答についての基本的なモデルのようなイメージといえる。IWMは「自己モデル(自分は他者から受容される存在かどうか)」「愛着対象モデル(他者からどのような応答が期待できるか,他者は信頼できる存在かどうか)」の2つに分かれている。
形成されたIWMは,感情の経験・表出・抑制のみならず,愛着と関連する情緒的・感情的に重要な情報の処理方法といった事柄にも影響を与える。IWMが選択的フィルタとして働くことにより,自動的にある種の情報に選択的に注意を向け解釈・評価を行い,その結果,注意の拡散を避け,情報処理の効率性や安定性の向上につながっている。
先行研究からは,対人関係に関連した情報の処理は愛着の内的作業モデル,特に“回避”の影響を受けること(島,2010),内的作業モデルにおける回避傾向が高い人は①その表情とは異なるネガティブな情動の存在を認知,②“表情とは一致しない情動がないこと”の認知に時間を要する+真顔や快表情に対しても“ネガティブ情動がないこと”の認知に時間を要する(島他,2012)などが報告されている。また表情のみならず,潜在的親密性回避傾向は愛着に関連する情報処理に対して抑制的に働き,親密性回避が高い場合は①愛着関連の情報への意識的なアクセスが困難になる,②愛着関連ネガティブ語への反応が促進される,といったことが起こりうることが報告されている(藤井他,2015)。

◆愛着と早期不適応スキーマ(EMS)と自伝的記憶の概括化(OGM)
PTSD 者は,無意図的な侵入記憶を経験しやすく,トラウマ関連記憶に対する意図的な検索が困難となって自伝的記憶の概括化 (overgeneral autobiographical memory : OGM)が多くみられる。
幼少期の有害体験は,母親と子どもの断絶・拒絶スキーマの関係を有意に媒介することが確認された。さらに,この関係は,特にネガティブな経験を過剰に想起する傾向が高い子どもにおいて,より強いものであった。小児期のトラウマ体験後の情動調節過程に由来するOGMが早期不適応スキーマ(EMS)の伝達を促進することが示された(Alaftar & Uzer ,2022)。

1-2-2.共感性の発達と愛着
 安定した愛着が,高い感受性や応答性の高い養育によって培われていた場合,その児童の後年の自己制御能力や遂行機能のみならず,心の理論獲得にも関与している(Kochanska,2000)。一方愛着形成の失敗は心の理論の獲得を妨げることでコミュニケーションに支障をきたすだけでなく,攻撃性を抑止することに失敗しやすい状況をもたらす。
 不安定な愛着の子どもは,共感性に欠け,周囲とうまくやれず,周囲からの評価も低い(Sroufe,1998)。
 男性犯罪者対象の研究では,幼いころの母親の世話不足と,非共感的な傾向との間に,有意な相関が認められた。虐待による影響を取り除いた後でも有意な相関は認められている。また母親の世話が不足して共感性の低下が認められる場合には,高い攻撃性を伴っていた(Kimonis et al.,2013)。
共感性には「認知的要素」と「情動的要素」があり,認知的要素には心の理論=メンタライゼーションの機能も含まれる。このメンタライゼーションが乏しいと,衝動性などの傾向がより有害な形で行動化しやすいが,逆にメンタライゼーションが高いと,行動上の問題に抑止的に働くとされている(Taubner et al.,2013)。
多くの知見から,不安定な愛着スタイル並びにそれによって引き起こされる愛着障害は共感の未発達と実説に関連すると考えられる。その背景には,幼少期における養育者からの情動的応答性の不足や共感を持って接してもらった経験の不足が関与していると考えられる。なお,不安定な愛着スタイルのうち,「回避型」愛着スタイルは他者に対する関心や意識の低さが共感の未発達を引き起こしているのに対して,「不安型」愛着スタイルは共感の未発達に直接影響することから,不安定な愛着スタイルが共感の発達に及ぼす影響は,愛着スタイルのタイプによって異なる可能性があると考えられている(福井・岡田,2019)。

1-2-3.攻撃性と愛着
 混乱型(無秩序型)は,回避型と抵抗/両価型の特性が無秩序にみられるタイプで,不安定な養育者からの脅威にさらされ続けた結果と考えられる。また混乱型を示した子供は,後年に共感性の低下や攻撃性の亢進が認められる(福井・岡田,2019)。
 混乱型は,成長とともに統制型を呈しやすいが,反抗挑戦性障害と診断された子供では,不安定型愛着の中でも統制型愛着を示す子供が多かった(Speltz et al.,1995)
 財産犯より暴力犯では,悲惨な虐待の結果生じたと考えられる極めて不安定な愛着スタイルが認められ,他者の気持ちを考慮するということ自体困難であった(Fonagy et al.,1996)。暴力的な犯罪者の方が親との愛着が不安定(Marcus & Gray,1998)。
RADの診断のある里子の攻撃性について,「激怒と呼ばれる極端で長時間の癇癪を起こす」「激怒している間こどもはしばしば落ち着かない」「激怒はRADの子どもによって制御不能と認識されている」「激怒は差別的養育者に向けられる」「激怒のきっかけは環境適応の困難さと関連しているよう」の5カテゴリーが報告された(Vasquez & Miller ,2018)

1-2-4.衝動性と愛着
 愛着が安定した人はコルチゾールのレベルが低く,臨床的にも不安やストレスを感じにくい。一方で混乱型はストレスに対してコルチゾールレベルが過剰に上昇しやすい(Hertsgaard et al.,1995)。
安定した愛着の人では,怒りといったネガティブな情動にとらわれにくいだけでなく,怒りにとらわれた時でもそれをコミュニケーションや相互理解を深める方向に生かす傾向にある/一方で不安定な愛着の人では,怒りは信頼関係を破壊する方向に向かう傾向にある(Cassidy,1994 ; Mikulincer,1998)。不安定愛着者は遂行機能の低下も認められている(福井・岡田,2019)。

1-2-5.犯罪と虐待・愛着 ※虐待→犯罪の因果関係の研究はないことに注意
 愛着の安定性が直接に反社会的な行動の直接因となっているというより,愛着の安定性は反社会的行動の抑制因子として働いていることが示唆されています。そのため,愛着の安定性が欠如した場合には,抑制因子が働かなくなることによって,反社会的行動が出現しやすくなるというメカニズムが提唱されています。必ずしも,被虐待児が犯罪に走るという安易なものではありませんので,そこは注意してほしいところです。
6歳8か月の時点で子どものルールを守らない傾向の主因子となったのは,親が力によって子を支配しようとする傾向であった。しかし1歳3か月の時点で子どもと親の愛着が安定していた場合にはその影響が薄められることが分かった(Kochanska & Kim,2012)。
暴力的な犯罪者や反社会性パーソナリティ障害には,幼児期~青年期に虐待の被害者が多いことが多数の研究から裏付けられている(Cohen,2008)。虐待やネグレクトを受けたケースでは,反社会性パーソナリティ障害の傾向(22歳時点)が有意に認められた(Horwits et al.,2001)。16歳の時点での反社会的行動を左右したのは13歳時点での母親との関係よりも幼児期の虐待であった(Aguilar et al.,2000)。反社会性パーソナリティ障害の傾向と関連があったのは,幼少期の虐待(種別問わず)であり,収入や母親が一人親かとか母親の学歴などは無関係であった。/だが,虐待の有無に関係なく,反社会性パーソナリティリスクに最も影響していたのは「1歳半の時点で母親が自分の世界に引きこもり,子どもに対して無反応」なことであった。また混乱型愛着が8歳で認められる場合は反社会性パーソナリティ障害には転するリスクが高かった(Shi et al.,2012)。
 依存症においては,報酬系を統制する眼窩前頭皮質などの異常が報告されている。眼窩前頭皮質は善悪の判断や道徳観,行動の抑制などの機能を担っている。ドラッグ依存症者は非常に不安定な愛着,特におそれ型愛着を示す割合が高く(Schindler et al.,2005),つまり不安定な愛着は依存症を介して犯罪リスクを増加させる可能性がある(福井・岡田,2019)。
窃盗においては,Follan & Minnis(2010)はボウルビイの“窃盗犯は例外なく親との離別や愛情不足を経験している事実を見出した”という研究結果を見直し,早期の母子分離よりも虐待が原因ではないかと考察している。Grant & Kim(2010)は窃盗癖の擁護背景には,両親どちらからも,愛情深い世話が不足している傾向が顕著で,また母親の保護も乏しい傾向が報告している。
※これらの研究は①愛情不足や虐待により家庭に居場所を獲得できず,②家庭外に居場所を求めた結果,③窃盗が居場所獲得の機能を有した結果定着していった,といった窃盗の機能や他研究のエビデンスベースに考える必要がある。愛情不足→窃盗では,あまりに飛躍が大きい論理である。
 性犯罪において,岡田が医療少年院で経験した10数例の性犯罪のケースでは,親密な関係が苦手で共感性が乏しい回避型のケースが圧倒的に多かった。児童に対する強制わいせつなどのケースでは,自閉症スペクトラム愛着障害が併存しているケースがほとんどであった(福井・岡田,2019)。

2.RADの先行因子や原因・関連要因
2-1.RADのリスク因子
 RADになってしまうリスクは,どのようなものが分かってきてるのでしょうか。RADは,ネグレクトや主たる養育者の度重なる変更,養育環境におけるマルトリートメントの質が重要な要因だとされています。しかし他にはあるのでしょうか。
幼少期に施設での養育を経験した子どもたちは,施設に入所したことのない子どもたちに比べて,12歳の時点でRADとDSEDの徴候がより多く見られた。里親への委託年齢の影響は認められなかったが,経験した養育の中断の回数と,より遅い家庭復帰および施設でのケア比率の高さはそれぞれ,RAD徴候上昇に関連していた。つまり,幼少期の不利な養育環境が愛着障害の兆候に長期的な影響を及ぼすことを示し,質の高い養育介入がRADとDSEDの両方の減少に関連することが示された(Humphreys et al.,2017)。
里親委託中の被虐待児において,教育不足,10代の妊娠,親密なパートナーによる暴力,犯罪歴,抑うつ気分,幼児期の虐待,精神科歴,物質乱用歴などの母親のRADのリスク因子が検討された。これらのリスク因子のうち,母親の精神科歴は,子供のRADのリスクを2.3倍増加させるものであった(Zeanah , Scheeringa, Boris, Heller, Smyke, & Trapani , 2004)。
親の精神病理と子供のRADとの間に強い関連,妊娠中の喫煙は子供のRADと関連,母子家庭と親の高年齢は独立してRADと関連していた。RADの子どもを持つ親に最も多く見られた精神疾患は,アルコールおよび薬物中毒/乱用とうつ病であった(Upadhyaya et al., 2019)。
妊娠中の母親の喫煙は,子どもの皮質灰白質の体積の減少と関連しており(Rivkin et al.,2018),これはRADと重度の虐待歴のある子どもでも観察されている(Shimada et al.,2015)。また妊娠中に大量に喫煙する女性は,胎児への愛着が弱いと報告されており(Magee, Bublitz, Orazine, Brush, Salisbury, Niaura, & Stroud, 2014),動物に関する研究では,出生前のニコチン暴露が脳の報酬系の構造変化を引き起こし,腹側線条体に放出されるドーパミンのレベルを低下させることが示唆されている(Gold, Keller, Perry, 2009 ; Kane, Fu, Matta, & Sharp , 2004)。同様の所見は,母親の喫煙に出生前に暴露された青年において観察されている(Müller et al.,2013)。
腹側線条体の活性化の低下は,RADと診断され,重度の虐待の既往がある子どもでも観察されている(Takiguchi,2015)。
以上によりまとめると,RADのリスク因子としては,重度の虐待,施設養育,母の精神疾患歴(アルコールおよび薬物中毒/乱用とうつ病),妊娠中の喫煙,母子家庭,親の高年齢,あたりになるのかなと思われます。

2-2.RADの神経学的側面
 脳部位との関連も報告されています。脳部位についての説明は以前のエントリでも触れていますのでそちらで。
RADはCC(冠状体)や射影・視床経路の構造変化と関連しており,RAD傾向が自身の情動調節に関与している可能性が示唆。
RADが視覚野の灰白質体積の減少や腹側線条体の機能変化と関連している(Shimada et al.,2015;Takiguchi et al.,2015)。視覚野はIPVなど暴力目撃とも関連のある部位ですが,線条体の体積に対する虐待の潜在的影響は一貫性がありませんが(Teicher & Samson, 2016),重度の虐待との関連なのかもです(Takiguchi,2015)。腹側線条体報酬系とも関与する領域ですので,関連はありそうだなと思いますが。
RAD群における高い金銭的報酬条件の間に,尾状核および側坐核における活性の有意な減少が観察され,両側線条体活動と回避的な愛着の間に有意な負の相関がRAD群とTD群で観察され,RAD群における線条体神経報酬活性は著しく減少していた。つまり,ドーパミン作動性機能障害がRADを有する人の線条体に発生する可能性がありそうとのことです。
脳梁本体(CC),内嚢後縁と放線冠(前,後,上)を含む投射・視床経路のFA値は,TD(定型発達)群に比べRAD群で有意に高いことが判明した。さらに,RAD群はTD群に比べ,CC本体と上記経路のRD値が有意に低かった(Makita, Takiguchi, Naruse, Shimada, Morioka, Fujisawa, & Tomoda, 2020)。いずれにしても,RADは脳の神経学的側面に影響を与えるといっても差し支えないかな?

3.RADは子どもの状態に影響を及ぼすのか
3-1.機能的影響
 RADの子どもはどのような機能的影響を受けているのでしょうか。これまでの研究では主に「報酬系」への影響が言われ続けています。特に1歳前後までに虐待を受けたことが報酬系機能の低下に大きく影響するといわれています(出典失念)。
報酬系への影響:RAD は,他のすべてのグループと比較して,高および低金銭的報酬の条件の両方の間に尾状体,被蓋および視床の活動の減少を示し,報酬感受性の低下を示していた。また被殻の活動はPTSDの重症度や解離と関連していた。このことは,RADはドーパミン作動性機能障害が存在することを示唆している。
その他への影響:RADは,感情,行動,学習困難などの併存疾患のリスク上昇と関連している(Lehmann ,Havik, Havik, & Heiervang, 2013 ; Raaska et al., 2012)。

3-2.行動・情緒的影響(重複あり)
RADの行動・情緒的特徴はやはり,診断基準にもある情緒の抑制の一方で,説明のつかない恐怖・怒りエピソードなどでしょうか。
RADの診断のある里子の攻撃性について,「激怒と呼ばれる極端で長時間の癇癪を起こす」「激怒している間こどもはしばしば落ち着かない」「激怒はRADの子どもによって制御不能と認識されている」「激怒は差別的養育者に向けられる」「激怒のきっかけは環境適応の困難さと関連しているよう」の5カテゴリーが報告された(Vasquez & Miller ,2018)。
情動・行動障害と心理社会的問題の有病率はRADやDSED(脱抑制社会対人関係障害)の青年において一般集団よりも著しく高く,児童虐待やネグレクトにさらされた他の青年における所見と同等であった。うつ病と不安症はRADの青年に最もよく見られる併存障害だが,CD/ODD(行為障害/反抗挑戦性障害)はほぼ同様によく見られ,RADと診断された者の40%に認められた一方,CD/ODDを持つすべての青年のうち,RADの診断を併発しているのはごく少数(14%)に過ぎない。したがって,行為問題とRADはともに虐待やネグレクトと関連し,養育者の行動によって変化しうるが,虐待やネグレクトの既往のある人の行為問題はRADと同等ではなく,そのように解釈すべきではない(Seim, Jozefiak, Wichstrøm, Lydersen & Kayed, 2020)。

3-4.社会的影響
愛着障害児の育児負担:AD(愛着障害)の子どもを持つ親は,ASD自閉スペクトラム症)の子どもを持つ親よりもPSI(育児ストレス)のレベルが高いと報告した。両障害の基準に達した子どもの親は,PSIのレベルが最も高いと報告した(Davies, Glinn, Osborne, & Reed, 2022)。

4.RADは治療可能なのか
 RADの治療は可能なのでしょうか。基本的には認知行動療法的な関わりによって,RAD特有の行動傾向を緩和していく感じなのかなと思います。薬物療法については,薬の効果でRADっ傾向が低減するのでなく,併存障害の緩和によって総合的に状態を改善していく,という感じのようでした。また,積極的な子育てと子どもの情緒に敏感な養育を促進する,ビデオ・フィードバック・ インターベンション(VIPP-SD)というプログラムもあるようでした。VIPP-SDは訓練を受けた介入者によって家庭内で行われ,介入者は養育者へのフィードバックを一貫した愛着に基づいたメッセージにまとめ,子どもの合図やコミュニケーション,養育者の敏感な反応,それが子どもに与えるポジティブな効果に注目させる,という内容のようです。
施設から養子に出された子どもについての研究では,養子縁組後数ヶ月から数年経過した時点でRADの症例はなかった。また里親ケアは,RAD徴候の減少と関連していた。RADは現在施設で生活している子供に多くみられ,子供が施設での養育から離れるとRADの改善が期待できることから,施設での養育をなくすことが優先されるべきである(出典失念)。
Zeanah et al.(2016)によると,幼児に対する最も重要な介入は,感情的に利用可能な愛着者を確実に提供することである。まず,臨床家は養育者を通して,手のかかる子供と積極的に交流する方法を学んだり,養育者が子供の行動を管理したり,必要であれば養育者自身の不安,フラストレーション,怒りの感情に集中的に対処する手助けをしたりすることができる。
RADの症状を持つ,あるいはRAD発症リスクのある児童養護施設の子どもたちにVIPP-SDプログラムを適応させて,子どものRAD症状,愛着の質,感情的/行動的困難に加えて里親は感受性とストレスについて評価を行ったところ,介入を受けた人々は質的インタビューにおいて,スキルの向上や子供との関係の改善などに肯定的な意見を表明していた(Oliveira et al.,2022)。
Zeanah et al.(2016)によると,精神薬理学的介入は,RADまたはDSEDの中核的特徴には不適。しかし,併存する障害──たとえば,関連する不安障害,ADHD気分障害──に対する薬理学的介入は,包括的評価によって継続的な症状および障害が証明された場合に適応となることがある。

5.RAD児童のアセスメントや対応など
ここで改めて事例を提示します。

母より本児の顔を枕で押さえつける,叩く,蹴るといった身体的虐待が繰り返されて一時保護,施設入所となった1歳児童,知的には普通域で発達面に問題は無し。父は,実母へのDVに加えてギャンブルでの多額の借金を作っており,DVにより疲弊した母は仕事をしていないこともあり借金は増える一方であった。
一時保護となった本児は,表情は強張っているが,泣くことはなく,付き添いの児童相談所職員と離れるときもスムーズであった。しかし,徐々におもちゃの取り合いや養育者の取り合いで他児に暴力を振るったり怒鳴りつけたりといった行為を繰り返すようになり,注意を受けると激しく長時間泣き叫ぶかんしゃくを起こすようになった。そういった感情表出の激しさがある一方で,排泄面では不快を訴えることがなかったり,机に頭をぶつけたり他児に叩かれたり痛い思いをしても無表情でやり過ごす傾向が強いなど負の情動表出が抑制されていた。楽しい嬉しい等の表出が全くなく,感情表出は不快時の激しい行動化のみと,感情表出面のアンバランスさが目立っていった。

5-1.本児の状態像のアセスメント
本児の状態像をざっと見ていくと,
・おもちゃの取り合いや養育者の取り合いで他児に暴言暴力を繰り返す
・注意を受けると激しく長時間泣き叫ぶかんしゃくを起こす
・一方で愛着行動(痛いから泣く)のような負の情動表出が抑制されている
こういった点が特徴的だと感じられます。ここら辺が虐待やその他何らかの影響があるのかもしれません。

診断基準を確認すると,
診断基準A:成人の養育者に対して一貫して示される,抑制的で,情緒的にひきこもった行動のパターン「①子どもが苦痛を感じた際に最低限しかないし全く慰め等を求めない,②子どもが苦痛を感じた際の慰めに対してほとんどないし全く反応しない」
診断基準B:持続性の社会的・情緒的混乱「③成人の養育者との,脅威を与えるようなものでないやり取りにおいてでさえ,説明のつかない怒りや恐怖といったネガティブな情動を示すエピソードがある」
の2つに該当しそうです。
という訳で,RADの可能性も検討しながらアセスメントを継続していく必要があるかなと思いました。

本ケースの養育環境としては,
・1歳の時点ですでに母より本児の顔を枕で押さえつける,叩く,蹴るといった身体的虐待が繰り返され
・父が実母へのDV(IPV目撃)
・父がギャンブルでの多額の借金を作る
・母はDVにより疲弊して仕事ができなかった
が挙げられます。

本ケースのRADのリスク因子については以下が考えられました。
幼少期に施設養育経験者は12歳の時点でRADとDSEDの徴候がより多く見られ,家庭復帰までの期間とRAD徴候上昇に関連 (Humphreys et al.,2017)
ただ,養育環境のリスク因子としては虐待でなく母の精神疾患とあり((Zeanah , Scheeringa, Boris, Heller, Smyke, & Trapani , 2004),矛盾があります(施設養育はほぼ虐待あり)。寄与度が違うということなのでしょうかね。いずれにしても,母の精神疾患,虐待歴などはRAD傾向に寄与していると言ってもいいんじゃないかなぁと感じました。
またIPV(親密なパートナーからの暴力)もあったようなので,それによって母の状態像が例えばうつ的になっているとか,そういった情報が調査できればアセスメントを補強できるかなと思いました。

本児がRAD傾向があるとしたら,以下のようなものに注意できればと思います。
RAD群の左一次視覚野で20.6%有意に減少し,RADの視覚的感情調節障害と関連している可能性や,RAD児童の攻撃性の高さ(Vasquez & Miller ,2018),うつ病と不安症の併存(Seim, Jozefiak, Wichstrøm, Lydersen & Kayed, 2020),不安定な愛着の人では,怒りは信頼関係を破壊する方向に向かう傾向(Cassidy,1994 ; Mikulincer,1998),遂行機能の低下(福井・岡田,2019)などが言われています。またCD/ODD(行為障害/反抗挑戦性障害)はRADと診断された者の40%に認められた (Seim, Jozefiak, Wichstrøm, Lydersen & Kayed, 2020)。
現在表出しているものとしては,攻撃性が該当しそうです。今後こう言ったリスクがあるかも,という視点でいいかなと思います。

IPV目撃の影響についても掲載しておきます。
IPV目撃は,子どもの安全な愛着の低下と関連し(Noonan et al., 2020),子どもの社会性と情動の発達を阻害し(Leyton, 2020),内面化行動問題および外面化行動問題の初期レベルが高さ(Yoon et al., 2017),さらに10歳時点での受容語彙力(d=0.26,p=0.009),一般言語力(d=0.23,p=0.047),語用論的言語力(d=0.41,p<0.001)の能力低下と関連していた(Conway et al., 2021)。
IPV単体の影響に限らず,身体的虐待やネグレクトを受けた人よりも,親のDVを目撃し,かつ自分も暴言虐待を受けた人の方が,解離症状をはじめとするトラウマ反応が重篤であった(Teicher et al., 2006 ; Polcari et al., 2014)。また,各パターンの家庭内暴力(すなわち,両親間の暴力を目撃し,親の暴力を経験すること)にさらされると,より高いレベルの心的外傷後ストレス症状(PTSS)が予測される(Haj-Yahia et al., 2019)。母親の抑うつ症状を調整した後も,語用論的言語能力との関係(d=0.32,p=0.006),および受容的語彙能力との関係(d=0.20,p=0.052)の結果が残った(Conway et al., 2021)。つまり言語能力には母の精神疾患による影響に加えてIPV目撃自体が負の影響を及ぼすことが分かります。

また,RADや虐待に関わるCPTSD(複雑性PTSD)という概念があります。不適応行動はこちらで考えていった方が筋が通ることは多いです。
以前のエントリーで書いたので,こちらを参照していただけますと幸いです。

5-2.本児の不適応行動が形成された機序
本児の不適応行動はどのように形成されたのでしょうか。
器質的なものには原因はなさそうですので,やはりマルトリートメントが本児の状態像に大きく寄与していると考えて差し支えないかなと思います。
父から母へのIPV目撃により,愛着や社会性,言語能力に負の影響を及ぼした可能性が考えられ,癇癪や暴言暴力のような外在化行動につながっている可能性もまた考えられます。
臨床的には,暴力的な支配構造の中で緊張状態の続くマルトリートメント環境のため,母もIPV被害により本児への養育に不十分さがあったことで,本児との間に安心安全な愛着関係がはぐくまれず,それが情動調節の困難さ,不適応行動としての外在化行動に繋がっていったと考えることは可能かなと思います。
愛着関係が不十分な中,緊張状態の続く環境においてポジティブな情動を受容される経験の乏しさのために,必要な情動の抑圧と負の情動の行動化に繋がっていき,その結果としてRADとみられる状態像が作られていったと考えることが出来ます。

5-3.本児に将来起こりうるリスクを検討
親の支配傾向や愛着不安定さは,抑制因子が働かなくなることによって,反社会的行動が出現しやすくなるというメカニズムが提唱されています(Kochanska & Kim,2012)。過去の被虐待と反社会性傾向に関連(Aguilar et al.,2000;Horwits et al.,2001),不安定な愛着は依存症を介して犯罪リスクを増加させる可能性(福井・岡田,2019)といった反社会性との関連が報告されていることから,将来的な反社会性などにも注意が必要かなと思います。
その他の影響として,RADは,報酬系のほか,感情,行動,学習困難などの併存疾患のリスク上昇 (Lehmann ,Havik, Havik, & Heiervang, 2013 ; Raaska et al., 2012)などもあるため,心理教育や学習支援といったサポートが必要になってくるかもしれません。
また養育者への影響として,育児ストレスは愛着障害>ASD(Davies, Glinn, Osborne, & Reed, 2022)とあり,養育者へのサポートも必要になると思われます。
つまり総合すると,養育者へのサポートを継続しつつ,学習支援等の一般的なサポートを行いつつ,可能な限り反社会性が行動化しないようにフォローしていくことが必要になる,という感じなのかなぁと思いました。

5-4.所見
以上を総合して,所見としては以下のようなものが考えられました。
母の身体的虐待により措置中の1歳児童。知的には普通域で発達特性も認められないが、情動の抑制傾向と感情調節の困難さというアンバランスな情動表出が特徴的である。
本児は父による暴力的な支配構造の中で緊張状態の続くマルトリートメント環境下で育ち,母もIPV被害により不安定な養育に陥ったことで,両親と本児との間に安心安全な愛着関係が育まれなかった可能性が高い。常時の緊張状態を緩和する関わりの乏しさ、予測困難な被害体験の連続などにより、自我を表明し受容されることを求めずに抑制する傾向や、情動調節の困難さから不適応行動としての外在化行動に繋がっていったと考える。
今後は本児の自我の表明を促す心理教育や生活フォローなどを通して対人不適応リスクの低減を図ることが求められる。

RADのケアというより、RADに特徴的な感情や行動の問題に焦点化してケア、という方向性がよいのでしょうか。
あまり自身がある訳ではないので教えて偉い人。

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Chat GPTを用いた虐待対応例

Chat GPTというものをご存じでしょうか。
近年のAIの進化はすさまじく、チャット形式で最適な回答をくれる可愛い(怖い)やつでして、
「~~を口説く俳句を教えてください」とか不謹慎な命令を出すと「倫理的にだめ、自然なコミュニケーションで仲良くなれ」と説教をくらったりします。

このChat GPTを使用して、虐待対応についてプランニングが可能なのでは?と思いました。

今回は、「5歳が父からの身体的虐待」(架空事例)の通告を受けて、その初期段階からChat GPTに対応方法を質問していく、というのを想定してみました。また、新たな情報が入ったらその都度Chat GPTに確認する、という感じで進めてみました。

英語で質問して英語で回答を受けるのですが、分かりやすいようにすべて日本語で翻訳してこちらに貼り付けています。
Q:からはじまるものはこちらで作成した質問
A:から始まるものは、それを受けた回答になります

※便宜的に被害児童を「A」としています。Child protection service=児童保護サービス=アメリカにおける児童相談所

Q:5歳のAが、30歳の父に身体的虐待を受けた。
保育園の先生が、Aの右目と右足に痣があるのを発見した。
父はコミュニケーションが苦手で、保育園の先生との会話も下手で、保育園に何度も感情的なクレームを言っている。父はAによく怒鳴っているのを、保育園の先生が何度も見ている。
Aは「父が怖いから家に帰ることが嫌だ」「Aは1週間に1度は父から殴られる」「母もAに怒鳴ってくるし、母は父から僕を守ってくれない」と保育園の先生に言った。

Child protection serviseは、まず何をすべきで、父や母とどのような話をして、父や母と何を確認すべきでしょうか?Aを家庭から里親へ移動させた方が良いでしょうか?

この質問を投入したら、じわじわと文字が入力されていき、最終的に以下のような回答に至りました。↓
A:子どもの保護サービスの最優先事項は、子どもの安全と健康を確保することです。提供された情報に基づくと、A が家庭内で危害や虐待の危険にさらされており、早急な介入が必要であるという明確な兆候があります。

児童保護サービスは、A の安全を確保するために、最初に A を家から移動させ、里親またはその他の安全な施設に配置する必要があります。これにより、調査が進行中の間、子供に安全な環境が提供されます。

児童保護サービスはまた、A、就学前の教師、およびその他の関係者と話すことを含め、虐待の申し立てについて徹底的な調査を実施する必要があります。調査は、虐待の程度を判断し、加害者を特定し、必要な法的措置のための証拠を収集することを目的とする必要があります。

また、児童保護サービスは、父親と母親の両方と話し合って、話の彼らの側を理解し、彼らが持つかもしれない懸念について話し合う必要があります.話し合いは、専門的かつ脅迫的でない方法で行う必要があり、虐待の事例、子育ての慣行、およびその他の関連する問題について質問することが含まれる場合があります。

さらに、児童保護サービスは、父親がAまたは他の子供に継続的なリスクをもたらしているかどうかを判断するためにリスク評価を実施し、特定されたリスクを軽減するために適切な措置を講じる必要があります。

子供を家から引き離す決定は軽視すべきではなく、子供の安全と健康を確保するために必要な場合にのみ行うべきであることに注意することが重要です。最終的な目標は、安全が確保され次第、子供を家族と再会させることです。
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\

◆凄くないですか?やや概論チックではあるものの、このケースに沿った具体的な話に言及してくれているのが「ヤベェ・・・」と思った点です。
単なる概論的な話だけだったら、まぁそんなもんだよねで終わったんですが。
きっと、6歳以下の被害児童とか、40歳未満の加害者とか、そういった虐待再発率に寄与するエビデンスを参照して回答してくれているんだろうなぁということが分かるので、ファクトチェックがる程度できる人が見ると余計「ヤベェ」となると思います。

これだけだと対応としては不十分なので、さらに質問を追加していきます。

\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
Q: このケースの「子どもへの継続的なリスク」とは、具体的にどんなものが想定されますか?

A: この場合、子供に対する継続的なリスクは、さらなる身体的虐待と精神的トラウマのリスクになります。その子は、週に一度父親に殴られたと報告し、家に帰るのが怖いと言いました。父親はまた、子供に怒鳴っているのが観察されており、幼稚園に感情的な不満を抱いていた.これらはすべて、子供に対する進行中のリスクの指標です。

児童保護サービスは、虐待の深刻度と頻度、および虐待が将来エスカレートする可能性を評価する必要があります。また、薬物乱用、メンタルヘルスの問題、暴力歴など、子供に害を及ぼすリスクを高める可能性のあるその他の要因も考慮する必要があります。

進行中のリスクの評価に基づいて、児童保護サービスは、継続的な監視、カウンセリング、またはその他の支援サービスを家族に提供するなど、児童の安全を確保するための追加の措置を講じる必要がある場合があります。場合によっては、危害のリスクが軽減されるまで、子供を里親ケアまたはその他の安全な施設に入れる必要がある場合があります。


Q: 「監視を継続する」とは、具体的にどういうことですか?

A: 「監視を継続する」とは、児童保護サービスが引き続きあなたの状況をチェックして、あなたの安全と虐待が継続しないことを確認することを意味します.これには、ソーシャルワーカーがあなたの家や里親の家を定期的に訪問すること、あなたがどのように過ごしているかを定期的にチェックインすること、あなたのケアに関与する他の介護者との継続的なコミュニケーションが含まれる場合があります.

継続的な監視の目的は、必要なサポートとサービスを受けていること、および新たな懸念や問題が発生していないことを確認することです。新たな懸念や問題が発生した場合、児童保護サービスは適切な措置を講じて対処し、安全を確保します。

監視の頻度と期間は、ケースの特定の状況と安全に対するリスクのレベルによって異なります。児童保護サービスは、あなたが安全で、虐待の危険性がなくなったと確信できるまで、あなたの状況を監視し続ける場合があります。
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◆このように、ケース概要を伝え、必要に応じて質問を追加していくことで、より詳細な回答を出してくれます。すごいですね~~。
この初期情報をもとに、「早急な介入が必要であるという明確な兆候」という前提のもと
1.現在判明しているリスクとは
子供に対する継続的なリスクは、さらなる身体的虐待と精神的トラウマのリスク(週に一度父親に殴られたと報告し、家に帰るのが怖い)
父親のリスク:子供に怒鳴っている、幼稚園に感情的な不満を抱いていた

2.今後調査すべきリスクは
薬物乱用、メンタルヘルスの問題、暴力歴など、虐待ないし虐待再発に寄与するリスクファクターの有無

3.着手すべき対応は、調査は、虐待の程度を判断し、加害者を特定し、必要な法的措置のための証拠を収集することを目的とするという前提で
・A、就学前の教師、およびその他の関係者と話すことを含め、虐待の申し立てについて徹底的な調査
・父親と母親の両方と話し合って、話の彼らの側を理解し、彼らが持つかもしれない懸念について話し合う
・父親がAまたは他の子供に継続的なリスクをもたらしているかどうかを判断するためにリスク評価を実施(虐待ないし虐待再発に寄与するリスクファクターの調査)し、特定されたリスクを軽減するために適切な措置を講じる

ということが分かります。
では、それにそって調査を進めたところ、以下の状況まで進んできたと仮定して、さらなる問いを投げてみました。

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Q:父は「Aはもう虐待をしません」と反省しています。父は、殴りそうになった時、別の部屋に移動してクールダウンを図りたいと言っています。
これにより、虐待の再発リスクはなくなりますか?
虐待の再発リスクがなくならないとしたら、何があれば再発リスクを低下させることができますか?

A: もう虐待はしていないという父親の主張は、子どもを殴る前に冷静になるために別の部屋に移動したいと言っているだけでは、虐待の再発のリスクを排除するのに十分な証拠にはなりません。

第一に、子供はすでに身体的虐待を受けており、その虐待に関連する精神的トラウマが持続する可能性があります。さらに、父親が将来自分の行動をコントロールできるという保証がないため、父親が虐待行為に再発するリスクがあります。

虐待の再発のリスクを減らすために、児童保護サービスは次のようないくつかの措置を講じることができます。

家族へのカウンセリングと支援サービスの提供: これは、父親と家族が虐待の原因となっている可能性のある根本的な問題に対処し、ストレスや感情を管理するための戦略を立てるのに役立ちます。

定期的なチェックインと監視: 児童保護サービスは、定期的なチェックインと監視のシステムを確立して、子供の安全と虐待の兆候がないことを確認できます。

育児クラス: 児童保護サービスでは、父親と母親が育児クラスに参加して、身体的暴力を伴わない適切な育児テクニックとしつけ戦略について学ぶ必要があります。

家族療法: 家族療法は、家族内のコミュニケーションと人間関係を改善し、虐待の原因となった可能性のある対立や根本的な問題に対処するのに役立ちます。

法的措置: 虐待が深刻な場合、児童保護サービスは、子供の安全を確保し、父親の行動に責任を持たせるために法的措置を取る必要がある場合があります。
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◆児相は軽微な虐待の場合は「注意喚起して、再発防止プラン(安全プラン)を策定して終結」となることが珍しくないです。また、結果として、注意喚起くらいしかできなかったケースも中にはあります。
結論としては、注意喚起だけでは有効とは言えないぞと指針が示されました。なのでそれだけで終わらず、対応を継続したところ、以下の状況に至りましたので質問を再度投げました。

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Q: 父は非暴力によるコミュニケーションを学びました。父による暴力はなくなったが、父はAに「死ね、バカ」と言うといった心理的虐待が増加しました。
Aは家にいるのがつらいと話しています。
Child protection serviceは何をすべきですか?

A: 父親の身体的暴力はなくなったが、心理的虐待が増加した場合でも、児童保護サービスは、子供の安全と幸福を確保するために関与する必要があります。

心理的虐待は、子供の精神的健康と幸福に長期にわたる影響を与える可能性があり、この問題にできるだけ早く対処することが重要です。

児童保護サービスは、児童およびその他の関係者へのインタビューを含め、心理的虐待を調査し、証拠を収集して虐待の程度と深刻度を判断する必要があります。

調査に基づいて、児童保護サービスは、虐待に対処し、子供を支援するための計画を立てることができます。これには、子供と家族のためのカウンセリングとサポート サービス、状況の監視、虐待が続く場合は里親またはその他の安全な施設に子供を配置することが含まれる可能性があります。

さらに、児童保護サービスは、虐待が深刻または進行中の場合、父親に対する差し止め命令の取得や刑事告訴など、法的措置を検討する場合があります。

子どもの安全と健康を優先し、虐待やトラウマから回復するために必要な支援やリソースに確実にアクセスできるようにすることが重要です。


Q:父はなぜAに暴言を吐くのですか?
父は自己中心的なパーソナリティで、共感性が低いです。父は「自分は正しい」という信念を曲げることができないです。
父は、自分が虐待をしてしまったことについて、反省していないです。

A: 父親の行動にはいくつかの根本的な要因が関係している可能性があるため、なぜ父親があなたを激しく非難するのかを正確に言うことは困難です。しかし、あなたの説明に基づいて、あなたの父親の行動は、彼の性格特性と共感の難しさに関連している可能性があります.

利己心が高く、共感力が低い人は、自分の行動が他人に与える影響を理解するのに苦労する可能性があり、虐待的または人を傷つける行動に関与する可能性が高くなります.さらに、自分の正しさに対する固い信念と、自分の過ちや欠点を認めたがらないことが、コミュニケーションや対立の解決を困難にする原因となる可能性があります。

これらの特徴は父親の行動に影響を与える可能性がありますが、言い訳にはならないことに注意することが重要です。他人に対して虐待的または有害な行動をとることは誰にとっても許されません。安全と健康を確保するために、助けと支援を求めることが重要です。


Q: 利己心が高く、共感力が低い父は、虐待を続けてしまうのですか?

A:特に父親が助けを求めて行動を変えようとしている場合、父親が今後も虐待し続けるかどうかを確実に予測することは不可能です.


Q:child protection serviceは、「父は変わらない」という前提で、子どもの安全を見守っていくことも必要ですか?

A: はい。児童保護サービスは、父親が変わらないことを前提として、子供の安全に注意を払うことが重要です。虐待する親が行動を変えることを期待することは常に理想的ですが、子供の安全と幸福を第一に優先することが重要です.

父親が身体的および精神的虐待を含む虐待の歴史があり、子供の安全について継続的な懸念がある場合、児童保護サービスは、危害のリスクがなくなる・軽減するまで子供を里親またはその他の安全な施設に置くことを検討する必要がある場合があります。

児童保護サービスは、家族と協力して、メンタルヘルスや薬物乱用の問題など、虐待に寄与している可能性のある根本的な問題を特定し、これらの問題に対処するための適切なサポートとサービスを提供する必要があります。ただし、子供の安全は常に最優先事項であるべきであり、子供が危険にさらされている場合は、子供を家から追い出すことを意味する場合でも、子供の安全を確保するための適切な措置を講じる必要があります。

状況は時間の経過とともに変化する可能性があり、父親の行動が虐待行為に再発する可能性があるため、児童保護サービスが状況を監視し、子供への危害のリスクを評価し続けることも重要です。

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◆結局体罰はなくなったものの、別の形で虐待が継続してしまっています。
体罰がなくなったからいいのか?と思いがちですし、命の危険がないからまぁ介入も緊急性は低いかな、という判断がされることも多いですが、これに沿うと、
心理的虐待を調査し、証拠を収集して虐待の程度と深刻度を判断する」ことは必要と判断されます。
また、家族と協力して、メンタルヘルスや薬物乱用の問題など、虐待に寄与している可能性のある根本的な問題を特定し、これらの問題に対処するための適切なサポートとサービスを提供することを検討していくことになります。

そしてリスク評価を進めていくと、以下のような情報が加わりましたので、質問を投げてみました。

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Q:この父親は、薬物乱用やアルコール依存はない。しかし、父は自閉スペクトラム症で、衝動性が高いです。さらに、父も過去に心理的虐待を受けていて、自己肯定感が低いために、他者が父に対して話すことを被害的に受け取り、攻撃的に反応する傾向が強いです。
父の虐待は継続してしまうのでしょうか。また、何があれば父の虐待リスクは下がるのでしょうか。

A: 父親の虐待行為が今後も続くかどうかを予測することは困難です。それぞれのケースは独特であり、さまざまな要因に左右されるからです。しかし、父親が自閉症スペクトラム障害を患っており、非常に衝動的である場合、行動や感情をコントロールするのが難しくなり、虐待のリスクが高まる可能性があります.

児童保護サービスが家族と協力して、父親の自閉症スペクトラム障害と衝動性行動を考慮した安全計画を策定することが重要です。これには、カウンセリング、セラピー、育児クラスなど、父親が感情や行動を管理するのに役立つサポートとリソースを提供することが含まれる場合があります。また、行動に対する明確な境界と期待を設定し、状況を注意深く監視して、子供が安全で保護されていることを確認することも含まれる場合があります。

虐待のリスクを下げるために、父親が虐待行為の一因となっている可能性のあるうつ病や不安神経症など、根底にあるメンタルヘルスの問題のサポートと治療を受けることは、父親にとって役立つかもしれません。また、虐待のない方法で自分のニーズや感情を表現できるように、感情を管理するための効果的なコミュニケーションスキルと戦略を学ぶことも役立つかもしれません.

共感と理解をもってこの状況に取り組み、父親を含む家族全員にサポートとリソースを提供することが重要です.また、子供の安全と健康を優先し、虐待やネグレクトの懸念が継続している場合は適切な措置を講じることも重要です。


Q: 「父親の自閉症スペクトラム障害と衝動性行動を考慮した安全計画」とは具体的にどのようなものですか?

A: 父親の自閉症スペクトラム障害と衝動性行動を考慮した安全計画は、父親の障害によってもたらされる独特の課題も考慮しながら、家庭での子供の安全と幸福を確保するように設計された計画です。

このような計画には、次のようないくつかのコンポーネントが含まれる場合があります。

引き金を特定する: 計画には、父親の衝動的または虐待的な行動の引き金となる特定の状況または行動を特定することが含まれる場合があります。たとえば、計画では、潜在的なトリガーとして、大きな騒音、ルーチンの変更、またはなじみのない人とのやり取りを特定する場合があります。

対処戦略の開発: 計画には、父親が圧倒されたり、引き金を引いたりした状況で使用するための対処戦略を開発することが含まれる場合があります。これらの戦略には、休憩を取る、感覚ツールや活動を使用して落ち着く、セラピストや支援者からの支援を求めることが含まれる場合があります.

積極的な子育て戦略の開発: 計画には、父親の固有のニーズと課題に合わせた積極的な子育て戦略の開発が含まれる場合があります。たとえば、計画には、父親が子供とコミュニケーションをとるのを助けるために視覚補助や社会的な物語を使用したり、良い行動を奨励するために積極的な強化戦略を使用したりすることが含まれる場合があります.

サポート ネットワークの確立: 計画には、必要に応じてサポートや支援を提供できる友人、家族、または専門家など、家族のためのサポート ネットワークの確立が含まれる場合があります。これには、レスパイト ケア サービス、在宅サポート、または治療サービスが含まれる場合があります。

定期的な監視と見直し: 計画には定期的な監視と見直しが含まれ、子供の安全を確保し、家族のニーズを満たすのに効果的であることを確認します。子供のニーズや家族の状況が変化するにつれて、計画は時間の経過とともに調整する必要があるかもしれません.

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◆以上により、新たに加わったリスクと評価をもとに、必要な対応が具体的に提示されました。
これ以降は、父親の自閉症スペクトラム障害と衝動性行動を考慮した安全計画を策定するという大きなテーマの中で
・怒りのトリガーの特定、怒りのマネジメントの獲得
・カウンセリング、セラピー、育児クラスなど、父親が感情や行動を管理するのに役立つサポートとリソースを提供
・父のうつ病や不安神経症など、根底にあるメンタルヘルスの問題のサポートと治療
・虐待のない方法で自分のニーズや感情を表現できるように、感情を管理するための効果的なコミュニケーションスキルと戦略を学ぶ
・行動に対する明確な境界と期待を設定し、状況を注意深く監視して、子供が安全で保護されていることを確認
といった対応に進んでいくことが求められそうです。

いかがでしょうか。言葉は悪いですが、なかなか頼ることの難しい上司や先輩の助言よりもはるかに現実的で根拠のある提言が続いており、
そして子どもの利益に沿った提案でもあると感じます。
Chat GPTの欠点として、より個別的な対応については回答が難しいという点がありますが、ケース概要を伝えて求められる対応を一般論として(だけど現実的で根拠のある)提案してもらえるという点では、ものすごく有用なのではないかなと思います。
組織の中に、ファクトチェックを行える人物を置いておくと、間違った判断が採用される可能性も減るのではないかなと思い、「AIにゆだねるのは不安」という偉い方の不安も払しょくできたりしないかな、なんて思います。
Chat GPTによる虐待対応プランニング、非常におすすめです。

Chat GPT https://openai.com/blog/chatgpt/