児童虐待の専門職が 心理学や統計学を語るブログ

心理学や、心理学研究における統計解析の話など

2023-01-01から1年間の記事一覧

攻撃性のタイプ/リスク因子/神経機序/介入

攻撃性一般攻撃性とは一般的に、他人に危害や傷害を加えることを意図した行動を指す。身体的攻撃、言語的攻撃、関係的攻撃など、さまざまな形で現れます。 身体的攻撃には、殴る、蹴る、押すなど、身体に危害や損傷を与える行為が含まれます。 言葉的攻撃に…

ASDの心理学的特徴と神経学的特徴

1.社会的コミュニケーションと相互作用 1-1.認知的共感と情動的共感 1-2.表情認知 2.制限・反復的行動:Restricted and Repetitive Behaviors 3.感覚処理の困難:Sensory Processing Difficulties 4.実行機能(Executive Function :EF)と心の…

ADHDと虐待・脳・攻撃性

0.ADHDの概要 1.多動性と衝動性 2.ADHDと関連が示されている概念 2-1.虐待 2-2.虐待以外 2-3.環境的影響 2-4.遺伝的影響 2-5.神経伝達物質的影響 3.脳の構造的影響 3-1.大脳基底核と小脳 3-2.前頭前野 3-3.扁桃体 …

社会的(語用論的)コミュニケーション症(Social (Pragmatic) Communication Disorder:SPCD/SCD(SPCD))

大学院の課題でカプラン(Sadock et al., 2016)をベースにまとめたものです。せっかくなのでこちらにも。 いわゆるASDと混同されがちな診断、という印象です。 ASDと思っていた子が実はSPCDだった、なんてことは結構ある気がします。0.概要 言語障害の一つ…

施設入所した児童と実親との面会交流のポジティブ/ネガティブ効果

子どもが施設や里親に行った場合であっても、家族や子供には親と面会交流する権利があります。もちろん、場合によっては加害者と子どもの面会を拒むことは可能ですが、それはまた別の機会に話題にするとして、 虐待加害者が親だったとして、その親と面会をさ…

被虐待児の感情コントロール:感情ラベリング(Affect Labeling: LA)

0.感情コントロール方法:感情コントロールなんてできるの? 虐待を受けた児童のケアやアセスメントの中で、感情コントロールに課題を抱えている子どもは多いです。 もちろん、その子ども自身の問題や責任という訳でなく、虐待や生来的な衝動性といった外…

児童虐待の子どもへの影響(簡易ver)

虐待の影響について、ほぼ箇条書きでまとめてみました(脳への影響についての詳細を除く)。 最初に概要をお伝えすると、 認知・心理状態:表情認知、共感性、報酬処理、短期記憶、言語能力、負の刺激への過敏性、行動統制力(衝動性)、自分で感情の動揺を…

反応性アタッチメント障害(Reactive Attachment Disorder:RAD)という虐待の影響

0.RADの事例 母より本児の顔を枕で押さえつける,叩く,蹴るといった身体的虐待が繰り返されて一時保護,施設入所となった1歳児童,知的には普通域で発達面に問題は無し。父は,実母へのDVに加えてギャンブルでの多額の借金を作っており,DVにより疲弊…

Chat GPTを用いた虐待対応例

Chat GPTというものをご存じでしょうか。 近年のAIの進化はすさまじく、チャット形式で最適な回答をくれる可愛い(怖い)やつでして、 「~~を口説く俳句を教えてください」とか不謹慎な命令を出すと「倫理的にだめ、自然なコミュニケーションで仲良くなれ…